
担当の人が外に出ているあいだに、取引先から電話がかかってきます。受けた人は、近くの紙に「〇〇さんから電話。折り返しください」と書いて、担当の人の机に置きます。夕方に戻った担当の人がメモを見ても、どこの〇〇さんか、何の件か、急ぎなのかが分かりません。
電話のメモは、受けた人が忙しいときほど短くなります。番号の聞き漏れ、名前の字の取り違え、用件の書き忘れ。担当の人は、相手にもう一度聞き直すことになり、取引先にも手間をかけます。
この記事では、電話のメモが伝わらない理由と、聞く項目の決め方、受けた人のメモをAIで同じ形に整えて担当へ渡す手順を、折り返しの依頼を例に説明します。
電話のメモが伝わらない理由
電話のメモがうまく伝わらないのは、受けた人の力不足ではありません。電話を受けながら、何を聞けばよいかを考え、聞いたことを書くのは、もともと難しい作業です。
- 聞く項目が決まっていない:人によって、名前だけ書く人、用件まで書く人がいる
- その場の言葉で書く:「例の件」「この前の」のように、受けた人には分かっても、担当の人には分からない
- メモを置く場所が決まっていない:机の上、パソコンの画面の付箋、口頭と分かれる
- 急ぎかどうかが分からない:担当の人が、どのメモから手をつけるか決められない
AIが手伝えるのは、主に2つ目と4つ目です。受けた人の言葉を、担当の人が読んで分かる文に整え、急ぎかどうかの印を付けられます。1つ目と3つ目は、AIを使う前に社内で決めておくことです。
中小企業基盤整備機構の調査では、AIを導入したあとも効率化が難しいと感じる業務として、「人の判断が必要な業務(営業提案、顧客折衝など)」を挙げた会社が7割近くにのぼりました。電話の応対は、まさに相手と向き合う仕事です。AIに任せるのは応対ではなく、応対のあとの記録を整える所だと考えると、無理がありません。
聞く項目を決めておく
電話で聞く項目を、5つほどに決めます。多すぎると、電話の最中に全部を聞けません。項目を書いた紙を電話機のそばに貼り、受けた人が見ながら聞けるようにします。
例:電話で聞く項目と、聞き方| 項目 | なぜ要るか | 聞き方の例 |
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| 相手の会社名と名前 | どこのだれかを取り違えないため | 「念のため、お名前の字を教えていただけますか」 |
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| 連絡先 | 担当の人がすぐ折り返せるため | 「お電話番号をうかがってもよろしいですか」と言い、復唱する |
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| 用件 | 担当の人が準備をしてから折り返せるため | 「どのようなご用件か、うかがってもよろしいですか」 |
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| 急ぎかどうか | 担当の人が手をつける順を決めるため | 「何時ごろまでにご連絡すればよろしいですか」 |
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| 折り返しの都合 | かけ直してつながらないことを防ぐため | 「お電話がつながりやすい時間はございますか」 |
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4つ目の聞き方が工夫どころです。項目の並びは、電話の会話の流れに合わせて、名前、用件、急ぎかどうか、連絡先、折り返しの都合の順に聞いてもかまいません。「お急ぎですか」と聞くと、多くの方は遠慮して「急ぎません」と答えます。「何時ごろまでに」と聞くと、相手の本当の都合が分かります。
聞けなかった項目は、空けておく
電話の流れで、全部を聞けないこともあります。そのときは、聞けなかった項目を空けたままにしておきます。空いている欄は、AIが「聞けていない項目」として知らせてくれるので、担当の人が折り返すときに確かめられます。推測で埋めるより、空けておくほうが安全です。
メモをAIで同じ形に整える手順
聞く項目が決まったら、受けた人のメモをAIに整えさせます。受けた人の書き方は自由のままで、整えるところだけをAIに任せます。
- 電話を切ったら、受けた人は聞いたことを、思いつくまま社内のチャットやパソコンのメモに打つ(走り書きの紙なら写真を撮る)
- そのメモをAIに渡し、「次の5つの項目に分けて、担当の人が読んで分かる文にして。聞けていない項目は『未確認』と書いて」と頼む
- AIが整えた文を、受けた人が一度読み、聞いた話と違う所が無いかを確かめる
- 確かめた文を、担当の人へのメモとして、決まった場所(社内のチャットの担当ごとの部屋など)に送る
- 担当の人は、折り返したら「済み」と返事をする
3番の確かめは、短くてもかまいませんが、省かないでください。AIは、受けた人のメモに無いことを、もっともらしく書き足すことがあります。たとえば「来週」とだけあったのを、勝手に日付にしてしまう、といったことです。受けた人の記憶が新しいうちに読めば、すぐに気づけます。
4番で、メモを置く場所を1つに決めることも大事です。紙の机の上、付箋、口頭と分かれていると、整えたメモでも見落とされます。担当ごとの置き場所が決まっていれば、外から戻った担当の人は、そこを見るだけで済みます。
担当の人がいない日の決めごと
担当の人が出張や休みで、何日も戻らないこともあります。そのあいだに急ぎの電話が来ると、整ったメモが担当の部屋にたまるだけになります。担当ごとに「いない日に代わりに見る人」を決め、急ぎの印が付いたメモはその人にも届くようにしておきます。だれが代わりに見るかを、電話機のそばの紙に一緒に書いておくと、受けた人も迷いません。
整えたメモを、あとで探せるようにする
整えたメモは、担当の人に渡して終わりではありません。同じ取引先から何度も電話が来ているか、同じ用件の問い合わせが続いていないかを、あとで振り返る材料になります。メモを1か所にためておけば、月に1回、AIに「多かった用件を3つ挙げて」と頼むこともできます。
例:折り返しの依頼を担当へ
架空の会社の例です。営業の担当の方が外に出ているあいだに、取引先から電話がありました。
例:受けた人が打った走り書き
まるやまさん(いつもの材料屋さん) 来月分の件で相談 夕方までに電話ほしい 番号は名刺のとおりとのこと
これをAIに渡すと、5つの項目に分けた文が返ってきます。
例:AIが整えたメモ(受けた人が確かめる前)| 項目 | 中身 |
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| 相手の会社名と名前 | まるやまさん(材料の仕入れ先とみられる。会社名は未確認。名前の字も未確認) |
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| 連絡先 | 名刺の番号とのこと(番号そのものは未確認) |
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| 用件 | 来月分についての相談 |
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| 急ぎかどうか | きょうの夕方までに電話がほしい |
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| 折り返しの都合 | 未確認 |
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受けた人は、この表を見て「会社名は丸山商店」と書き足しました。名前の字と番号は、担当の人の手元の名刺で分かるので、そのままにします。そのうえで、担当の人のチャットの部屋に送りました。
もし受けた人が表を確かめずに送っていたら、「会社名は未確認」のまま担当の人に届き、担当の人は名刺の束から「まるやま」を探すことになっていたかもしれません。AIが「未確認」と書いた所は、受けた人が覚えているうちに埋められる所です。電話を切ってから数分のうちに確かめるのが、いちばん手間がかかりません。
戻った担当の人は、「夕方まで」と分かるので、ほかのメモより先にこの折り返しをします。「来月分の相談」と分かっているので、来月の注文の見込みを手元に用意してから電話できます。相手に用件を聞き直す必要がありません。折り返したあとは「済み」と返すので、受けた人も伝わったことが分かります。
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初回のご相談(無料・30分〜)はオンラインで行います。電話を受けてから担当の人に伝わるまでの流れをうかがい、聞く項目を一緒に決めます。最近の電話のメモを数枚お借りできれば、その場でAIに整えさせてお見せします。
受けた人がメモを打つと、整った形で担当の人に届き、折り返したかどうかも一覧で見られる、という道具が必要なときは、業務ツールの開発としてお受けします。お話をうかがったエンジニアがそのまま作り、試作を見ていただきながら直します。道具と一緒に、説明のスライドと説明の動画もお渡しします。
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まとめ:電話機のそばに、聞く項目の紙を貼る
- 電話で聞く項目を5つほどに決め、電話機のそばに貼る
- 聞けなかった項目は推測で埋めず、空けておく
- 受けた人のメモをAIで5つの項目に整え、受けた人が確かめてから送る
- メモの置き場所を担当ごとに1つにし、折り返したら「済み」と返す
まずは、聞く項目を書いた紙を1枚作って、電話機のそばに貼ってみてください。AIを使う前から、メモの抜けは減り始めます。