
経営会議の前日の夕方。営業からは売上の表、製造からは出来高と不良の表、管理からは人の出入りと残業の表が届きます。どれもExcelですが、列の並びも、月の書き方も、部署ごとに違います。資料を任された担当の方は、それを1枚に貼り合わせ、先月の資料と見比べて、夜までかかって仕上げます。
この作業は、担当の方がいないと会議が始められない仕事の代表です。集めて、そろえて、まとめる。そのうち「そろえる」と「まとめる」は、AIに下書きを任せられます。
この記事では、資料づくりに時間がかかる理由と、各部署の表の形をそろえるやり方、AIで1枚にまとめる手順、数字を人が確かめる所を、例を使って説明します。
経営会議の資料づくりに時間がかかる理由
資料を作る時間の内訳を書き出すと、多くの会社で次の4つに分かれます。
資料づくりの作業の内訳(例)| 作業 | 中身 | 時間がかかる理由 |
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| 集める | 各部署に表を出してもらう | 締め切りが守られず、催促の連絡が要る |
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| そろえる | 列の並び・単位・月の書き方を合わせる | 部署ごとに形が違い、毎月手で直している |
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| まとめる | 1枚に数字を並べ、ひとことを添える | 先月の資料を見ながら、言い回しを考える |
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| 確かめる | 写した数字が合っているかを見る | どこから写したかが残っておらず、見直しに時間がかかる |
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この表は一つの例です。ただ、担当の方に聞くと「まとめる」より「そろえる」に時間を取られている、という声が多くあります。部署の表の形が毎月少しずつ変わると、そのたびに貼り合わせ方を考え直すことになるためです。
AIを使う前に、まず「そろえる」を減らします。AIは形のそろった材料を渡されたときに、いちばん安定して下書きを作れます。形がばらばらなまま渡すと、列の取り違えが起きやすくなります。
中小企業基盤整備機構の調査では、AIをすでに導入している中小企業のうち、経営・企画部門でAIを導入していると答えた割合は58.5%でした。会議の資料や報告のように、社内の情報をまとめる仕事は、AIを使い始める場所として選ばれやすい分野の1つです。
各部署から集める表の形をそろえる
最初にやるのは、各部署へ配る「提出用の表」を1つ決めることです。部署ごとに中身は違ってかまいません。違うのは数字の項目だけにして、外側の形をそろえます。
そろえる4つの点
- 列の並び:左から「項目」「今月」「先月」「前年の同じ月」「ひとこと」の順にする
- 月の書き方:「2026年10月」のように1つに決め、和暦と西暦を混ぜない
- 単位:件・人・時間など、項目ごとに単位を列の名前に入れる(「残業(時間)」のように)
- ひとこと:数字が大きく動いた項目にだけ、理由を1行で書いてもらう
「ひとこと」の列が大事です。数字が動いた理由は、部署の人にしか分かりません。AIは数字の増減は読めても、その理由までは知りません。理由を1行もらっておくと、AIがまとめる文章が当て推量になりません。
形を変えてほしいと頼むときのコツ
部署の人にとっては、提出の手間が増えるように見えます。「この形で出してもらえれば、会議で同じ説明を2回しなくて済みます」と、相手の得を一緒に伝えると受け入れてもらいやすくなります。最初の月は、担当の方が1部署分を代わりに埋めて見本を見せるのも手です。
AIで1枚にまとめる手順
表の形がそろったら、毎月の手順を決めます。次の順番で進めると、どこまでがAIの仕事で、どこからが人の仕事かがはっきりします。
- 会議の3日前までに、各部署から提出用の表を集める(集まった表は、月ごとのフォルダに入れて残す)
- 表をAIに渡し、「部署ごとに、先月と比べて大きく動いた項目を3つまで選んで」と頼む
- 選ばれた項目と、部署の「ひとこと」をもとに、1枚の資料の下書きを作らせる
- 下書きの数字を、元の表と1つずつ見比べる(AIが写した数字を、人が確かめる)
- 会議で話し合いたいことを、担当の方か役員が下書きの最後に書き足す
- 会議の前日までに配り、使った表は資料と同じフォルダに残す
2番の頼み方を毎月同じにしておくのがコツです。頼み方を文にして手順書に貼っておけば、担当の方が休んだ月も、ほかの人が同じ形で資料を作れます。
数字の計算はExcelに任せる
前の月との差や、前年の同じ月と比べた割合は、AIに計算させずにExcelの式で出しておきます。AIは文章を作るのが得意な一方で、桁の多い計算や、たくさんの数字の足し算を間違えることがあります。計算はExcel、選ぶことと書くことはAI、と分けておくと、確かめる所が少なく済みます。
担当の方が休んだ月にも回るように
資料づくりが一人に頼りやすいのは、手順がその人の頭の中にしか無いからです。上の6つの手順と、AIへの頼み方の文、提出用の表のひな形、先月の完成した資料。この4つを1つのフォルダにまとめておけば、ほかの人が代わりに作る月も、同じ形の資料が出せます。
フォルダの中身は、作るたびに少しずつ直します。たとえば「製造部の表は、不良の件数を種類別に分けてほしい」と役員から声が出たら、提出用の表に列を足し、頼み方の文にも1行足します。直した日と中身を、手順書の終わりに1行ずつ書いておくと、次に引き継ぐ人が迷いません。
AIに入れてよい情報を先に決める
経営会議の数字には、社外に出したくないものも含まれます。使うAIのサービスが、入力した内容を学習に使わない設定になっているかを、始める前に確かめます。人の名前が入る表(個人の残業時間など)は、部署の合計にしてから渡すと安心です。
例:3部署の表から会議の1枚へ
ここからは、架空の会社の例で流れを見ていきます。数字はすべて説明のための例です。
例:営業部から届いた提出用の表(架空の数字)| 項目 | 今月 | 先月 | 前年の同じ月 | ひとこと |
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| 受注件数(件) | 42 | 51 | 45 | 大口の取引先1社が、発注を来月にずらした |
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| 新しい取引先(社) | 3 | 1 | 2 | 展示会で名刺交換した会社から2社 |
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| 見積もりの件数(件) | 68 | 60 | 57 | |
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製造部と管理部からも、同じ形の表が届きます。製造部は出来高・不良の件数・機械の止まった時間、管理部は入社・退社の人数と部署ごとの残業の合計です。
例:AIが作った下書き(人が直す前)
3部署の表と、手順書に貼ってある頼み方の文をAIに渡すと、次のような下書きが返ってきます。部署ごとに2〜3行で、数字の増減と、部署のひとことを組み合わせた形です。
- 営業:受注件数は42件で、先月より9件少なくなりました。大口の取引先1社が発注を来月にずらしたためです。見積もりの件数は68件で、前年の同じ月より11件多くなっています。
- 製造:不良の件数が先月の2倍になりました。部署のひとことでは、新しい材料に切り替えた週に集中しています。
- 管理:残業の合計は製造部で増え、営業部で減りました。
- 話し合いたいこと(下書き):見積もりは増えているのに、受注が減っている理由。
この下書きを担当の方が元の表と見比べ、数字の写し間違いが無いかを確かめます。例の中の「見積もりは増えているのに受注が減っている」は、AIが表から読み取った点です。会議で話す値打ちがあるかは、役員が決めます。
AIの下書きをそのまま配らないのは、間違いを見つけるためだけではありません。役員が「今月はここを話したい」と書き足すことで、資料が会議の進め方の紙になります。数字を並べるだけの資料より、話し合いが早く進みます。
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初回のご相談(無料・30分〜)はオンラインで行います。いま会議の資料をどう作っているかをうかがい、提出用の表の形を一緒に考えます。各部署の表を1か月分お借りできれば、その場でAIに1枚の下書きを作らせてお見せします。
AX推進顧問(月2回の定例・最低3か月)では、資料づくりのほかにも、AIを使える仕事を一覧にして、取り組む順番を決めます。会議の資料は、毎月くり返す仕事なので、最初に取り組む仕事の候補になりやすいものです。
表を集めてから下書きを作るところまでを、毎月ボタン1つで回る道具にしたいときは、業務ツールの開発としてお受けします。お話をうかがったエンジニアがそのまま作り、試作を見ていただきながら仕上げます。
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まとめ:提出用の表の形を1つ決める
- 時間を取られているのは「そろえる」作業。まず各部署の表の形を1つに決める
- 数字の計算はExcelの式、項目の選び方と文章の下書きはAIに分ける
- AIの下書きは、元の表と人が見比べてから配る
- 話し合いたいことは、役員が自分の言葉で書き足す
まずは、先月の会議で使った各部署の表を並べて、列の並びと月の書き方がどれだけ違うかを見てみてください。違いが分かれば、提出用の表の形はすぐに決められます。