
朝いちばんに、前の日の売上の記録を開きます。店ごとのレジの締めの紙、ネットで売れた分の一覧、配達で売れた分のメモ。それを見ながら、何年も使ってきたExcelの集計表に、店ごと・売り方ごとに打ち込んでいきます。表の形は社長も役員も見慣れていて、変えると「見方が分からない」と言われます。
集計を楽にしたいけれど、表の形は変えたくない。この2つは両立できます。AIに任せるのは、ばらばらの記録から数字を拾って、いつもの表の並びに並べるところまで。計算と表の見た目は、今のExcelのまま残します。
この記事では、集計が手作業のまま残る理由と、いつもの表の形をAIに覚えてもらう方法、毎日の手順の決め方を、店ごとの売上の日報を例に説明します。
集計が手作業のままになる理由
Excelの集計表は、式を入れれば計算は自動になります。それでも毎日の集計が手作業で残るのは、計算の前の「数字を拾って、決まった欄に入れる」ところが自動にならないからです。
- 元の記録の形が、店ごと・売り方ごとに違う(紙、ネットの一覧、メモ)
- 同じ店でも、日によって記録の書き方が少し変わる(担当の方が替わった日など)
- 「返品はマイナスで入れる」「試食で使った分は入れない」など、担当の方だけが知っている決まりがある
3つ目が、いちばん見落とされやすい点です。集計の担当の方は、数字を拾いながら、頭の中の決まりで足したり引いたりしています。その決まりが書き出されていないと、AIに任せても、人が手で直す所が残ります。
始める前に、いまの時間を測っておく
AIを使い始める前に、いまの集計に毎朝どのくらいかかっているかを、1週間だけ書き留めておきます。始めたあとと比べられるようにするためです。時間を測っておくと、「AIで速くなった所」と「確かめに時間を取られている所」が分かり、次に直す所を決めやすくなります。
帝国データバンク水戸支店の調査で、生成AIを業務で活用している茨城県内の企業に、主にどの業務で使っているかを聞いたところ、「データの集計・分析」は7.3%にとどまりました。最も多かったのは「文章の作成・要約・校正」(46.3%)です。集計にAIを使うのは、県内ではまだ少ない使い方だと言えます。
いつもの表の形をAIに覚えてもらう
表の形を変えずにAIへ任せるには、表の欄の1つずつについて「どこから拾うか」「どう扱うか」を書き出した説明書を作ります。これがAIへの頼み方のもとになります。
例:集計表の欄の説明書(店ごとの売上の日報)| 表の欄 | どこから拾うか | 扱いの決まり | 計算するのは |
|---|
| 店頭の売上 | 各店のレジの締めの紙の「売上合計」 | 返品はマイナスで入れる | AIが拾う |
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| ネットの売上 | ネットで売れた分の一覧の、その日の合計 | 取り消しになった注文は入れない | AIが拾う |
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| 配達の売上 | 配達の担当のメモ | 金額の書いていない行は「人が見る」の印 | AIが拾う |
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| 店の合計 | 上の3つの欄 | — | Excelの式 |
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| 前日との差 | 前日の「店の合計」 | — | Excelの式 |
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| ひとこと | 各店の締めの紙の余白のメモ | メモが無ければ空のまま | AIが拾う |
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右端の列が大事です。「AIが拾う」欄と「Excelの式」の欄を分けておきます。数字を読んで並べるのはAIの得意な仕事ですが、何十もの数字を足し上げると、ときどき答えがずれます。合計や差をExcelの式に残しておけば、拾い間違いがあっても、計算の仕組みそのものは崩れません。
説明書は、担当の方に話してもらって作る
扱いの決まりは、担当の方の頭の中にあります。いつもの集計を1日分やってもらいながら、「いま、なぜその数字を引いたんですか」と横で聞いて書き留めると、決まりが出てきます。書き留めたものをAIに整えさせれば、説明書の下書きになります。
毎日の手順を決める
説明書ができたら、毎朝の手順を決めます。最初の2週間ほどは、これまでどおり手で集計した表と、AIを使った表を並べて作り、合わない所を探します。
- 前の日の記録(レジの締めの紙の写真、ネットの一覧、配達のメモ)を1つのフォルダに集める
- 記録と欄の説明書をAIに渡し、「説明書の『AIが拾う』欄だけを、集計表の並びで書き出して」と頼む
- 書き出した数字を、集計表の決まった場所に貼る(式の入った欄には貼らない)
- AIが「人が見る」の印を付けた所だけ、元の記録を開いて確かめる
- Excelの式で出た合計と前日との差を見て、大きく外れた店がないかを見る
- 気づいたことを、説明書の「扱いの決まり」に書き足す
5番は、AIの拾い間違いを見つける網の役目もします。ある店だけ前日の倍になっていたら、売れたのか、桁を拾い間違えたのかを確かめます。人が全部の数字を見直すより、外れた所だけを見るほうが、早く確かに見つけられます。
元の記録の形が変わったとき
レジの機械を入れ替えた、ネットの売り場を増やした、といった変化があると、元の記録の形が変わります。そのままAIに渡すと、違う欄の数字を拾ってしまうことがあります。記録の形が変わる予定が分かったら、その週は手作業の集計と並べて作り、欄の説明書の「どこから拾うか」を書き直します。
店が1つ増えるときも同じです。集計表に列を足し、説明書にも1行足します。表と説明書を同じ日に直す、と決めておくと、片方だけが古くなって数字が合わなくなる、ということを防げます。
6番は、担当の方が替わったときのためです。決まりが書き足されていくと、説明書は集計の手順書にもなります。休みの日に別の方が集計しても、同じ数字が出せるようになります。
例:店ごとの売上の日報
架空の会社の例です。店は3つ、売り方は店頭・ネット・配達の3つとします。
例:朝、AIに渡す記録
A店とB店のレジの締めの紙の写真、C店の締めの紙の写真(返品が1件、手書きで書き足してある)、ネットで売れた分の一覧(取り消しが1件)、配達の担当のメモ(1行だけ金額が空)。これに欄の説明書を添えて渡します。
AIは、3つの店の「店頭の売上」「ネットの売上」「配達の売上」「ひとこと」の欄を、集計表と同じ並びで書き出します。C店の返品はマイナスで入り、ネットの取り消しは入りません。配達のメモの金額が空の行には「人が見る」の印が付きます。
例:AIが書き出した行(架空の数字。合計と前日との差は、貼ったあとExcelの式で出る)| 店 | 店頭の売上 | ネットの売上 | 配達の売上 | ひとこと |
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| A店 | 412,300 | 38,900 | 21,000 | |
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| B店 | 298,700 | 12,400 | 0 | 雨で夕方の客足が少なかった |
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| C店 | 355,100(返品1件を引いた数字) | 45,600(取り消し1件は除いた) | 人が見る:1行の金額が空 | |
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担当の方は、印の付いた配達の1行を配達の担当に確かめて書き入れ、表に貼ります。合計と前日との差はExcelの式で出ます。打ち込みに使っていた時間が、印の付いた所を確かめる時間に置きかわります。
この例で、集計表の見た目は1つも変わっていません。社長や役員は、いつもと同じ表を、いつもと同じ見方で読めます。変わったのは、表ができるまでの裏側だけです。
いばらきAIにご相談いただいたら
初回のご相談(無料・30分〜)はオンラインで行います。いまの集計表と、元になる記録を見せていただき、欄の説明書を一緒に作り始めます。1日分の記録があれば、その場でAIに拾わせてお見せします。
毎朝の手順の中で、記録を集めてAIに渡すところまでを自動にしたいときは、業務ツールの開発としてお受けします。いつもの集計表の形はそのままに、裏側だけを道具にします。お話をうかがったエンジニアがそのまま作り、試作を触っていただきながら直します。
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まとめ:集計表の欄の説明書を作る
- 表の形は変えず、数字を拾って並べるところだけをAIに任せる
- 欄ごとに「どこから拾うか・扱いの決まり・計算するのは」を書き出す
- 合計や前日との差は、Excelの式に残す
- 最初の2週間は手作業の表と並べて作り、合わない所を説明書に書き足す
まずは、いつもの集計表の欄を縦に並べて、それぞれ「どこから拾っているか」を書いてみてください。書けない欄があれば、そこが担当の方に聞いておくべき決まりです。