
「AIを入れるといくらかかるのか、調べておいて」。社長にそう頼まれて2社から見積もりを取ったら、1社は月ごとの顧問料だけ、もう1社は作る費用と毎月の利用料が分かれていて、並べても比べられない。調べるよう頼まれた担当の方が、よく行き当たる場面です。
AIの費用は、ソフトの値札のように1つの数字では決まりません。何を作るか、毎月何に払うか、作ったあとだれが支えるかで、中身が大きく変わります。
この記事では、金額の目安は書きません。会社ごとに違い、目安の数字だけが独り歩きしやすいためです。かわりに、費用が何で決まるかと、見積もりを比べる前に社内で決めておく3つのことを、社内で説明できる形でまとめます。
費用は「作る・使う・支える」の3つで決まる
見積もりの書き方は会社ごとにばらばらでも、項目を分けていくと、たいてい次の3つの山のどれかに入ります。
AI導入の費用の3つの山| 山 | 中身 | 払う時期 | 何で大きさが変わるか |
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| 作る | 仕事の流れの聞き取り、試作、道具としての仕上げ、説明の資料づくり | はじめに1回(作り足すときはその都度) | 道具の大きさ、画面の数、つなぐ先の数 |
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| 使う | AIの利用料、ソフトの利用料、データを置く場所の利用料 | 毎月 | 使う人数、使う回数、AIに読ませる量 |
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| 支える | 不具合の対応、小さな直し、問い合わせの窓口、顧問の定例 | 毎月、または必要なとき | どこまで任せたいか、直す回数 |
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どの山が重くなるかは、選ぶやり方で変わります。既製のソフトを借りるだけなら「使う」が中心です。自社専用の道具を作るなら「作る」が大きくなり、その道具を長く使うあいだは「支える」が続きます。
「使う」の費用は、だれの契約になるか
AIやソフトの利用料は、作る側ではなく、使う会社の契約になる形がよくあります。見積もりに利用料が入っているのか、別に払うのかで、同じ道具でも金額の見え方が変わります。比べるときは、利用料がどちらの契約かを1行書き添えておきます。
顧問の費用と開発の費用は、払い方が違う
「AI顧問」のように月ごとに払う形は、どの仕事にAIを使うかを決め、進み具合を見ていく費用です。道具そのものを作る費用とは別のことが多く、顧問料の中にどこまでの試作や開発が入るかは、会社によって違います。
反対に、開発だけを頼む形では、何を作るかが決まっている前提で見積もりが出ます。任せる仕事が決まっていないのに開発の見積もりだけを集めると、各社が思い描いた道具の大きさがばらばらになり、比べにくくなります。見積もりを見るときは、それが「決める費用」なのか「作る費用」なのかを、まず分けて読みます。
全国の中小企業も、費用を気にしている
中小企業基盤整備機構の調査では、AIを入れるうえで妨げになっていることとして「導入にあたっての高コスト」(AI:46.9%)が挙がっています。入れたあとの課題としても「ランニングコストが高い」が4割台でした。はじめの費用だけでなく、毎月かかり続ける費用も心配されていることが分かります。
だからこそ、はじめの金額の大小だけで決めず、3つの山を同じ期間で並べてから判断するのが大切です。
見積もりを比べる前に決める3つのこと
見積もりがばらばらになるいちばんの理由は、頼む側の前提が決まっていないことです。同じ「AIで事務を減らしたい」という一言でも、受け取った側はそれぞれ違うものを思い浮かべて見積もります。次の3つを社内で決めてから、同じ文面で各社に伝えます。
- 任せる仕事を1つに絞る:「事務全般」ではなく「月末に売上の表から請求書を作る仕事」のように、書類の名前で書きます。
- 使う人と人数を決める:だれが毎日使い、だれが結果を見るかを書きます。人数によって「使う」の費用が変わります。
- 人が確かめる所を決める:AIの結果をそのまま使うのか、担当の方が見てから使うのかを書きます。AIは間違えることがあるので、金額や数字が関わる所は、人が確かめる前提で考えます。
3つ目は見落とされがちですが、費用に効きます。確かめる所が多ければ、確かめやすい画面を作る手間が増えます。逆に、下書きを作るところまでをAIに任せ、仕上げは人がするのなら、作るものは小さくて済みます。
紙1枚にまとめて、各社に同じものを渡す
3つを紙1枚に書き、いつもの書類の見本(取引先の名前や金額は伏せて構いません)と一緒に各社へ渡します。前提がそろえば、見積もりの違いを「やり方の違い」として読めるようになります。
各社に渡す紙1枚の書き方(例)| 書く欄 | 書き方の例 |
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| 任せたい仕事 | 月末に、売上の表から取引先ごとの請求書を作る |
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| 今のやり方 | 売上の表を見ながら、請求書のひな形に取引先ごとに手で写している |
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| 回数と時間 | 月1回。経理の担当1人で、まる2日ほどかかる(例) |
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| 使う人 | 経理の担当1人が作り、社長が送る前に目を通す |
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| 人が確かめる所 | 金額の合計と、送り先の名前は人が見てから送る |
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| 渡せる見本 | 名前と金額を伏せた、先月の売上の表と請求書を1通ずつ |
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| まだ決めていないこと | 今の請求書のソフトを続けるかどうか |
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最後の「まだ決めていないこと」の欄は、空けずに書くのがこつです。決めていないことが分かると、各社は前提を置いて見積もり、その前提を書面に書いてくれます。前提の違いが見えれば、見積もりの違いの理由も読めます。
任せる仕事が絞れないときは
どの仕事から手を付けるか、まだ決められない会社もあります。その場合は、作る費用の見積もりを取る前に、任せる仕事を決める相談をはさみます。仕事が決まらないまま見積もりを集めても、比べる土台がありません。
月々の費用と作る費用の見比べ方
「月ごとの利用料だけで始められる案」と「はじめに作る費用がかかる案」は、そのままでは比べられません。使う期間をそろえて、合計を並べます。
- 使う期間を決める(たとえば3年)
- 案ごとに、はじめの費用と、毎月の費用に月数を掛けたものを足す
- 支える費用(保守や定例)も、同じ期間で足す
- 入れたあとも人の手で続く作業を、月あたりの時間で横に書く
- 合計と残る手間を見比べて、どの案を取るかを決める
見比べるときに書く項目と、見落としやすい点| 項目 | 書くこと | 見落としやすい点 |
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| はじめの費用 | 聞き取り・試作・作る・設定の費用 | 説明の資料や動画が入っているか |
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| 毎月の利用料 | AI・ソフト・データを置く場所の利用料 | 人数や回数が増えたときに上がるか |
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| 支える費用 | 保守や顧問の定例 | 小さな直しが入るか、作り足しは別か |
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| 期間の合計 | 上の3つを同じ期間で足したもの | 期間が短いと、月々の案が安く見えやすい |
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| 残る人の手間 | 毎月、人が手を動かす時間 | 書き写しや確かめの時間を数え忘れる |
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| やめるとき | 道具とデータが手元に残るか | アカウントがどちらの名義か |
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例:月末の請求書づくりを3年で比べる
例として、月末に売上の表から請求書を作る仕事を考えます。A案は請求書のソフトを月ごとに借りる、B案は今の売上の表から請求書を作る道具を作る、という2つです。A案はすぐに始められますが、売上の表から請求書のソフトへ写す作業が残ります。B案ははじめの費用がかかりますが、写す作業が減ります。どちらが合うかは、3年分の合計と、毎月残る作業の時間を並べて、はじめて見えてきます(ここでは比べ方だけを示しています。数字は会社ごとに違います)。
何年で比べるか
比べる期間が短すぎると、はじめの費用がかかる案が不利に見えます。長すぎると、そのあいだに仕事のやり方が変わり、見込みが外れます。目安にしやすいのは、今使っているパソコンや基幹のソフトを入れ替える時期です。その時期までに使い続けるかどうかで期間を決めると、社内でも納得を得やすくなります。
人の手間も、費用として数える
見比べるときに抜けやすいのが、人の手間です。毎月の利用料が小さい案でも、担当の方が毎月丸1日かけて書き写しているなら、その1日も費用です。「今は月に何時間かかっていて、入れたあとは何時間になりそうか」を案ごとに書いておくと、社長に説明するときの材料になります。
入れたあとの時間は、見積もりの段階では見込みでしかありません。試作を触ってみると見込みの確かさが上がるので、試作を見せてもらえるかどうかも、比べる点の1つになります。
費用で失敗しやすいところ
費用の失敗は、たいてい「数えていなかった山」から起きます。よくある形を並べます。
- はじめの費用だけで決める:作ったあとの利用料と支える費用を数えずに選び、2年目に毎月の支払いが重く感じる。
- 使う人数を少なく見込む:3人で試したら便利だったので全員に広げたところ、利用料が人数分ふくらんだ。
- 支える人を決めていない:作った人と連絡が取りにくく、小さな直しができないまま使われなくなる。
- 名義を確かめていない:アカウントやデータが頼んだ先の名義で、契約をやめると道具も止まる。
- 使う仕事が決まる前に契約する:AIの利用料を全社分払い始めたが、何に使うかが決まっておらず、使う人が増えない。
中小企業基盤整備機構の調査では、入れたあとの課題として「運用担当者の負荷が重い」が3割前後ありました。社内で道具を回す人の負担は、見積もりの表には出てきません。だれが毎月の確かめや問い合わせを受けるのかも、はじめに決めておくと安心です。
見積もりを受け取ったら、各社に聞いておくこと
- AIやソフトの利用料は、見積もりに入っていますか。入っていなければ、どのAIやソフトを使いますか。
- 使う人が増えたとき、どの費用が増えますか。
- 作ったあとの小さな直しは、どこまでが保守に入りますか。
- アカウントとデータは、どちらの名義で、どこに置きますか。
- 説明の資料や操作の動画は、もらえますか。
- 作る前に、試作を触って確かめられますか。
答えを表の「見落としやすい点」の欄に書き込めば、そのまま社内で回せる比べ表になります。
費用を小さく始める順番
はじめから大きく作ると、合わなかったときの戻りも大きくなります。費用を抑えたいときは、次の順で広げていきます。
- まずは下書きだけをAIに任せ、仕上げは人がする
- 1つの部署、1人の担当で試す
- 試作を触って、手間が本当に減るかを確かめてから作り込む
- ほかの部署や人数に広げるのは、確かめたあとにする
この順なら、途中で「合わない」と分かっても、それまでにかけた費用は小さく済みます。広げる前の段階で、使う人数あたりの利用料も見えてきます。
社長に伝えるのは3点で足りる
社長への説明は、①3つの山ごとの金額、②使う期間をそろえた合計、③入れたあとに残る人の手間、の3点で足ります。この3点が案ごとにそろっていれば、「どれが安いか」ではなく「どれが自社に合うか」で話ができます。
いばらきAIにご相談いただいたら
初回のご相談(無料・オンライン・30分〜)では、任せたい仕事をうかがい、3つの山のどこに費用がかかりそうかを一緒に整理します。ご提案・お見積もりも無料で、取り組むことと金額を書面でお出しします。
AX推進顧問は、月2回の定例で、AIに任せる仕事と取り組む順番を決めます。最低3か月からで、4か月目からは月ごとに続けるかを決めていただけます。道具を作るときは、話を聞いたエンジニアがそのまま作り、道具と一緒に説明のスライドと説明の動画をお渡しします。開発だけのご依頼も、聞き取りのうえでお受けします。
アカウントは御社の名義で作るので、契約が終わっても道具とデータは手元に残ります。AIやソフトの利用料は、御社のご契約になります。作ったあとは保守として、不具合の対応・小さな直し・問い合わせの窓口をお引き受けし、大きな作り足しは開発としてご相談します。
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まとめ:見積もりを取る前に、紙1枚に3つ書く
- 費用は「作る・使う・支える」の3つの山に分けて並べる
- 任せる仕事・使う人・人が確かめる所を決めて、各社に同じ文面で伝える
- 使う期間をそろえた合計と、残る人の手間で見比べる
- 利用料の契約と、アカウントの名義を確かめる
まずは、任せたい仕事を書類の名前で1つ書き、使う人と、人が確かめる所を書き添えてみてください。その紙が、見積もりを比べる土台になります。