はじめの一歩公開 約10分で読めます

ソフトを足すほど手間が増えるのは、なぜなのか?

SaaSか自社開発かの比較|積み上げる前に決める比べ方の軸

執筆いばらきAI編集部

この記事でわかること

  • SaaSが増えると、ソフトの間を人が運ぶ情報が増え、書き写しと確かめが積み上がる
  • 比べる軸は、仕事に合う度合い・入力の回数・変えやすさ・始めるまで・支える人・やめるとき
  • 制度に合わせて変わる仕事はSaaSのまま、ソフトの間の書き写しは自社専用の道具で減らす、という組み合わせも選べる
  • 判断は、ソフトの一覧と、ソフトの間に引いた線を数えるところから
古い天びん

見積もりは見積もりのソフト、受けた仕事は案件の管理ソフト、請求は請求書のソフト。1つずつ入れたときはどれも便利だったのに、気づけば同じ取引先の名前と金額を、3つの画面に打ち込んでいる。ソフトを足すたびに、ソフトとソフトの間に新しい書き写しが生まれることがあります。

SaaS(ネットを通じて月ごとに借りて使うソフト)は、契約すればすぐに使え、直しや更新も提供する会社がしてくれるのが強みです。一方で、自社の仕事の流れに合わない所は、人の手で埋めることになります。

この記事では、SaaSを足し続けるか、自社専用の道具を作るかを決めるための比べ方の軸を、表にまとめます。金額ではなく、仕事の流れから比べる方法です。

SaaSが増えるとき起きること

SaaSは1つの仕事をうまくこなすように作られています。そのため、仕事ごとに別のSaaSを入れていくと、次のようなことが起きやすくなります。

  • 同じ情報を何度も入れる:取引先の名前、案件名、金額を、ソフトごとに打ち直す
  • どれが正しいか分からなくなる:1つのソフトだけ直して、ほかのソフトに古い情報が残る
  • 画面ごとに操作を覚える:ソフトが増えるほど、新しく入った人が覚えることが増える
  • 毎月の利用料が積み上がる:人数とソフトの数に合わせて、支払いが増えていく
  • ソフトの決まりに仕事を合わせる:入れたい項目が無く、メモ欄や別の表で補う

中小企業基盤整備機構の調査では、AIなどを入れたあとの課題として「ランニングコストが高い」が4割台、「運用担当者の負荷が重い」が3割前後でした。ソフトを足すたびに毎月の費用と担当の方の手間が増えていく様子は、この数字とも重なります。

SaaSが増える理由の多くは、部署ごとに困りごとを片づけてきた結果です。営業は見積もりを早く出したくて見積もりのソフトを、経理は請求を楽にしたくて請求書のソフトを入れる。どちらも正しい判断ですが、部署と部署の間をつなぐ人が決まっていないと、その間の書き写しはだれの仕事でもないまま、事務の方や社長の手元に残ります。

ソフトの数より、ソフトの間の線を数える

何本のソフトを使っているかは、それだけでは問題になりません。困るのは、ソフトとソフトの間を、人が手で運んでいる情報が多いときです。見積もりソフトから案件の管理ソフトへ、案件の管理ソフトから請求書のソフトへ、と線を引いていくと、書き写しの場所が見えてきます。

線の数が少なければ、SaaSを足していっても困りにくいはずです。線が増えてきたら、比べ直す時期です。

次のSaaSを契約する前に、自分に聞く3つのこと

  • このソフトに入れる情報は、すでにほかのソフトに入っていないか
  • このソフトから出てきた情報を、別のソフトや表に手で写すことにならないか
  • このソフトに無い項目を、メモ欄や別の表で補うことにならないか

1つでも「なる」と答えたら、そのソフトを足すと線が1本増えます。足す前に、線をどう扱うかを考えておくと、あとで書き写しに追われにくくなります。

比べる軸:合う度合い・入力の回数・変えやすさ

SaaSを足すか、自社専用の道具を作るかは、次の軸で比べます。どちらが上ということではなく、仕事ごとに向きが違います。

SaaSを足す場合と、自社専用の道具を作る場合の比べ方
比べる軸SaaSを足す自社専用の道具を作る
仕事に合う度合いソフトの決まりに、仕事のやり方を合わせる今の仕事の流れに、道具を合わせる
入力の回数ソフトごとに入れる。ソフト同士をつなぐ設定があれば減らせる1回入れた情報を、ほかの表や書類に流す形にできる
変えやすさ直すかどうかは提供する会社が決める。自社の都合では変えにくい自社の都合で直せる。ただし直す人がいることが前提
始めるまで契約すればすぐ聞き取りと試作の時間がかかる
毎月の費用人数やソフトの数に合わせて増えやすいAIやデータを置く場所の利用料と、支える費用がかかる
支える人提供する会社の窓口作った人か、社内の担当
やめるときデータを書き出せるかを確かめるアカウントの名義とデータの置き場を確かめる

いちばん効くのは「入力の回数」

7つの軸のうち、毎日の手間にいちばん効くのは入力の回数です。同じ情報を3回入れている仕事は、入れる時間が3倍になるだけでなく、3か所の食い違いを確かめる時間も生まれます。入力が1回で済むなら、確かめる場所も1か所で済みます。

「変えやすさ」は、直す人とセットで考える

自社専用の道具は、自社の都合で直せるのが強みです。ただし、直す人がいなければ、その強みは生きません。作った人に保守を頼むのか、社内で直せる人を育てるのかを、作る前に決めておきます。

費用は、期間と人の手間までそろえて比べる

SaaSは毎月の利用料、自社専用の道具ははじめに作る費用が目立つので、そのままでは比べられません。3年など使う期間をそろえて合計を並べ、さらに、毎月残る書き写しや確かめの時間を横に書きます。費用の比べ方は「AI導入の費用の考え方」の記事でくわしく書いています。

AI導入の費用の考え方を読む

やめるときのことを、入れる前に確かめる

SaaSでも自社専用の道具でも、やめるときにデータを持ち出せるかで、次の選択肢の広さが変わります。SaaSなら、表の形で書き出せるか、書き出せる項目に足りないものは無いかを確かめます。自社専用の道具なら、アカウントとデータが自社の名義で置かれているかを確かめます。

自社専用が向く仕事・向かない仕事

自社専用の道具が向く仕事

  • ソフトとソフトの間で、同じ情報を手で写している仕事
  • 自社独自の書式や項目があり、既製のソフトではメモ欄や別の表で補っている仕事
  • 毎日、または毎週くり返し、量が多い仕事
  • 取引先ごとに形の違う書類を受け取り、そろえて入れ直している仕事

SaaSのままがよい仕事

  • 給与計算や会計のように、法律や制度の変更に合わせて直し続ける必要がある仕事(提供する会社が追いかけてくれます)
  • 業界の中で同じ型が決まっていて、既製のソフトでそのまま回る仕事
  • 回数が少なく、使う人も1人か2人の仕事
事務の仕事ごとの向き(早見表)
仕事向いている形理由
給与計算・会計・勤怠SaaSのまま制度の変更に合わせた直しを、提供する会社がしてくれる
メールの返事や文書の下書き汎用のAIの画面で足りることが多い1回ごとの仕事で、ほかのソフトとつなぐ必要が少ない
自社の書式の見積もりや報告書自社専用の道具既製のソフトに無い項目が多い
取引先ごとに形の違う書類の取り込み自社専用の道具+AIの読み取り形がばらばらで、既製のソフトの型に入らない
ソフトとソフトの間の書き写し自社専用の道具でつなぐどちらのソフトにも、その仕事の担当がいない
社内独自の集計や一覧自社専用の道具見たい切り口が会社ごとに違う

向く・向かないは、仕事ごとに分かれます。会社全体で「SaaSか自社開発か」を1回で決める必要はありません。仕事ごとに分けて考えると、組み合わせの答えが出てきます。

判断の手順

  1. 使っているソフトを、無料のものも含めて全部書き出す
  2. ソフトとソフトの間で、人が手で運んでいる情報に線を引く
  3. 線ごとに、月に何回、1回に何分かかっているかを書く
  4. いちばん時間のかかっている線を1つ選ぶ
  5. その線を、ソフト同士をつなぐ設定で消せるかを、まず確かめる
  6. 設定で消せなければ、自社専用の道具で消すかを考える

5番目を先に確かめるのが大事です。今のSaaSに、ほかのソフトとつなぐ機能がすでにあるなら、作らずに済むこともあります。つなぐ機能が無い、あっても自社の項目が流れない、という場合に、作る選択肢が出てきます。

例:3つのSaaSの間の書き写し

例:従業員40人ほどの設備工事の会社(架空)

見積もりは見積もりのソフト、受けた工事は案件の管理ソフト、請求は請求書のソフトで回しています。見積もりが通ると、事務の方が取引先・工事名・金額を案件の管理ソフトに打ち直します。工事が終わると、同じ内容を請求書のソフトに打ち直します。途中で金額が変わると、3つのソフトのどれを直したかを、社長が月末に見比べています。

例の会社で、自社専用の道具を間に入れた場合
場面今道具を入れたあと
見積もりが通ったとき案件の管理ソフトに、取引先・工事名・金額を打ち直す見積もりのデータを道具が読み込み、案件の一覧に並べる
金額が変わったとき3つのソフトのどれを直したかを覚えておく道具の1か所を直すと、請求のもとになる表にも反映される
工事が終わったとき請求書のソフトに、同じ内容を打ち直す請求のもとになる表を、請求書のソフトに読み込める形で書き出す
月末の確かめ社長が3つの画面を見比べる食い違いのある行だけを、道具が色を付けて示す

この例では、3つのSaaSを全部やめる必要はありません。請求書のソフトは、制度の変更に合わせて提供する会社が直してくれるので残します。見積もりのソフトも、使い慣れていれば残します。間の打ち直しと見比べの部分だけを、自社専用の道具で減らす形です。

例の会社で進める順番

  1. 3つのソフトの間の線を数え、いちばん時間のかかる「見積もりから案件の管理への打ち直し」を選ぶ
  2. 今の見積もりのソフトから、データを書き出せるかを確かめる
  3. 書き出したデータを読み込んで案件の一覧に並べる試作を作り、事務の方に触ってもらう
  4. 1か月ほど、今のやり方と並べて使い、食い違いが出ないかを見る
  5. 問題がなければ打ち直しをやめ、次の線(請求への打ち直し)に進む

1本ずつ線を消していくので、途中で止めても、それまでに消した線の分は手間が減ったままです。全部を一度に入れ替えるより、合わなかったときの戻りも小さく済みます。

AIはどこで使うか

この例でAIが役に立つのは、形のそろわない情報を読む所です。たとえば取引先から紙やPDFで届く発注の書類から、工事名や金額を読み取って案件の一覧に入れる、といった使い方です。AIは読み間違えることがあるので、読み取った金額は人が元の書類と見比べてから確定させます。

いばらきAIにご相談いただいたら

初回のご相談(無料・オンライン・30分〜)では、お使いのソフトと、その間で人が運んでいる情報をうかがいます。今のSaaSのまま設定で済むのか、間に道具をはさんだほうがよいのかを、一緒に整理します。

道具を作る場合は、話を聞いたエンジニアがそのまま作ります。試作を見ていただきながら直し、動く道具と一緒に、説明のスライドと説明の動画をお渡しします。アカウントは御社の名義で作るので、作ったものは御社の手元に残ります。どの仕事から手を付けるか決まっていない場合は、AX推進顧問の月2回の定例で、任せる仕事と順番から決めることもできます。

作ったあとは保守として、不具合の対応・小さな直し・問い合わせの窓口をお引き受けします。SaaSの画面が変わって読み込みが合わなくなった、といった小さな直しも、ここでお受けします。

業務ツールの開発について見る

まとめ:ソフトの一覧に、間の線を書き込む

  • SaaSの数より、ソフトの間を人が運ぶ情報の数を見る
  • 比べる軸は、合う度合い・入力の回数・変えやすさ・始めるまで・費用・支える人・やめるとき
  • 制度に合わせて変わる仕事はSaaSに任せ、間の書き写しを自社専用の道具で減らす組み合わせもある
  • 作る前に、ソフト同士をつなぐ設定で済まないかを確かめる

まずは、使っているソフトを紙に書き出し、ソフトとソフトの間に、人が手で運んでいる情報の線を引いてみてください。いちばん太い線が、最初に見直す所です。

出典・参考

よくある質問

SaaSをやめて、全部自社で作るべきですか。

全部を作り直す必要はありません。仕事ごとに、向いているほうを選びます。

会計や給与のように制度に合わせて変わる仕事はSaaSに任せ、ソフトの間の書き写しだけを自社専用の道具で減らす形もあります。

SaaS同士をつなぐ設定では、足りませんか。

足りる場合もあります。作る前に、今のソフトのつなぐ機能を確かめるのが先です。

つなぐ機能が無い、あっても自社独自の項目が流れない、という場合に、間に道具をはさむことを考えます。

自社専用の道具は、作った人がいなくなったら困りませんか。

名義と保守を先に決めておけば備えられます。アカウントとデータが自社の名義なら、道具は手元に残ります。

説明のスライドや動画があれば、使い方も社内に残ります。直す人については、作った人に保守を頼むか、社内で直せる人を育てるかを、作る前に決めます。

今のSaaSを解約すると、データはどうなりますか。

書き出せるかどうかは、ソフトごとに違います。解約を考える前に、表の形で書き出せるかと、書き出せる項目を確かめてください。

書き出したデータを自社専用の道具に読み込めれば、これまでの記録を引き継げます。読み込みの形は、試作の段階で確かめます。

自社専用の道具でも、AIは使えますか。

使えます。形のそろわない書類を読み取る、文章の下書きを作る、といった所にAIを組み込めます。

AIは間違えることがあるので、金額や数字は人が確かめる手順を残した形で作ります。

無料相談

会社名と困りごとを、一言送るだけ

まずは30分、
話を聞かせてください。

時間
30分〜
相談料
無料
場所
オンライン

訪問をご希望の場合はご相談ください。

事前に書類をお送りいただければ、その書類で試作をお見せします。ふだん使っている表や紙の書式など

ご相談の流れ

  1. メールを送る会社名と困っていることを一言お送りください。
  2. 初回のご相談返信で日程を決め、オンラインでお話をうかがいます。
  3. ご提案・お見積もり取り組むことと金額を書面でお出しします。
  4. ご契約・開始ご納得いただけたら始めます。