はじめの一歩公開 約11分で読めます

AIを入れて良くなったと、どう示せばいいのか?

AIの導入効果の測定|時間・ミス・待ち時間を前と比べる

執筆いばらきAI編集部

この記事でわかること

  • 測るのは「時間」「ミス」「待ち時間」の3つを軸に、仕事に合うものを1〜2つ選ぶ
  • 入れる前の1〜2週間、いつものやり方で記録をとっておく。これがないと比べられない
  • 見比べるときは1件あたりにそろえ、AIの答えを人が確かめる時間も含める
  • 数字にならない効果は、場面と声で書き、困ったことも並べて書く
黒い背景のストップウォッチ

AIを使い始めて2か月。役員会で社長から「で、どれくらい楽になったの」と聞かれ、担当の方が「だいぶ速くなった感じがします」としか答えられない。感じは本当でも、数字がないと、続けるかどうか、ほかの部署にも広げるかどうかを決められません。

効果を数字で示すのに、難しい計算はいりません。いる物は、入れる前の記録です。前の記録がなければ、後でどれだけ速くなっても比べようがありません。

この記事では、何を測るか、入れる前にどう測っておくか、1か月後と3か月後にどう見比べるか、そして数字にならない効果をどう書くかを、記録表の例を使って説明します。

何を測るか

AIの効果というと「時間の短縮」がまず浮かびます。実際、中小企業基盤整備機構の調査(令和8年3月)でも、AIを導入した中小企業が挙げた導入効果は「業務効率化/作業時間の短縮」が83.2%で最も高くなっています。

ただ、時間だけを測ると、見落とすものがあります。書き写しのミスが減った、お客さまを待たせる時間が短くなった、という変化は、作業時間には表れません。次の表から、自社の仕事に合う物差しを1〜2つ選びます。

測る項目と、測り方の例
測る項目どう測るか向いている仕事の例
作業時間1件にかかった時間を、始めと終わりの時刻で記録する見積書・日報のまとめ・議事録
ミスの数直しが入った件数、差し戻された件数を数える伝票の書き写し・請求書・在庫の記録
待ち時間依頼が来てから返すまでの時間を記録する問い合わせの返事・社内の申請・見積もりの回答
こなせた件数同じ時間で処理できた件数を数える注文の入力・データの整理
残業・持ち帰りその仕事のための残業や、家でやった時間を記録する月末の締め・社長の夜の事務

測るのは1つの仕事、多くて2つの項目

あれもこれも測ろうとすると、記録そのものが重荷になり、続きません。最初にAIを使う仕事を1つ選び、その仕事について、多くて2つの項目だけを測ります。見積書なら「1件の作成時間」と「差し戻しの数」、問い合わせなら「返すまでの時間」だけ、という具合です。

待ち時間は、相手の側から測る

3つのうち、いちばん見落とされやすいのが待ち時間です。作業時間は担当の方の手元の時間ですが、待ち時間は、お客さまや社内のほかの人が待っていた時間です。作業そのものは10分でも、ほかの仕事に追われて翌日の返事になれば、相手にとっては1日待ったことになります。

例:問い合わせの返事の待ち時間

例として、メールで届く問い合わせについて、「届いた時刻」と「返事を送った時刻」を2週間記録します。AIで返事の下書きを作るようにしたあとも同じ記録をとると、作業時間はあまり変わらなくても、すぐ手をつけられるようになって待ち時間が短くなった、という効果が見えることがあります。

どの項目を選ぶかは、「社長が何を気にしているか」で決めるのが近道です。残業を減らしたい社長には時間を、お客さまからの苦情を気にしている社長にはミスや待ち時間を見せると、報告がそのまま判断の材料になります。

入れる前に測っておく

効果の測定で、いちばんよくある失敗が、前の記録をとっていないことです。AIを入れてから「前は30分くらいかかっていたと思う」と思い出しても、その数字は当てになりません。人は、苦労した日のことを大きく覚えがちだからです。

前の記録のとり方

  1. 測る仕事と項目を決める(例:見積書の作成時間と、差し戻しの数)
  2. 記録表を1枚作る。列は「日付/件名/始めた時刻/終わった時刻/差し戻し」の5つ程度にする
  3. いつものやり方のまま、1〜2週間記録する。急がず、いつもどおりに進めることが大事
  4. 記録した期間に、特別に忙しい日や暇な日がなかったかをメモしておく
  5. 1件あたりの平均と、いちばん長かった件をまとめておく

例:見積書の前の記録

例として、営業事務の方が2週間で見積書を22件作り、合わせて約9時間かかったとします。1件あたり約25分です。差し戻しは3件で、どれも品番の書き写し違いでした。この「1件25分・差し戻し3件」が、比べるときの出発点になります(数字は説明のための例です)。

記録は、ストップウォッチで秒まで測る必要はありません。始めた時刻と終わった時刻を、分の単位で書けば十分です。途中で電話に出たら、その時間は引かずに「電話あり」とメモしておきます。あとで外れ値を見分けられれば足ります。

記録をつけるのは、その仕事をしている本人です。ただし、まとめるのは別の人にします。本人が平均を出すと、どうしても「よく見せたい」「大変さを分かってほしい」という気持ちが入るためです。報告をまとめる担当の方が、記録表を受け取って計算します。

ミスは「何を1件と数えるか」を先に決める

ミスの数を測るときは、何を1件と数えるかを先に決めておきます。決めていないと、前と後で数え方が変わり、比べられなくなります。

  • 上司や経理から差し戻された件数(いちばん数えやすい)
  • お客さまや取引先から指摘された件数(数は少ないが、いちばん重い)
  • 自分で出す前に気づいて直した件数(数えるのを忘れやすい)

3つ全部を数える必要はありません。最初は1つ目の「差し戻し」だけで十分です。AIを入れると、3つ目の「自分で気づいた直し」が増えることがあります。AIの答えを確かめる中で気づくものなので、これは悪いことではありません。数えるなら、別の欄に分けておきます。

前の記録がもうないとき

すでにAIを使い始めていて、前の記録をとっていなかった場合は、AIを使わずに同じ仕事を何件かやってみる方法があります。1日だけ、いつものやり方に戻して5件ほど作り、その時間を前の記録の代わりにします。完全ではありませんが、思い出した数字よりは確かです。

1か月後・3か月後の見比べ方

使い始めてすぐの数字は、あまり当てになりません。慣れるまでは、かえって時間がかかることもあるからです。見比べるのは、1か月後と3か月後の2回がおすすめです。

1か月後は「使い方に慣れたか」を見る時期、3か月後は「仕事のやり方として定着したか」を見る時期です。3か月後の数字を、続けるかどうか、広げるかどうかの判断に使います。

見比べの記録の例(見積書の作成。数字は説明のための例)
時期件数1件あたりの時間AIの答えを確かめる時間差し戻し
入れる前(2週間)22件約25分なし3件
1か月後(2週間)24件約18分1件あたり約4分(含む)2件
3か月後(2週間)25件約12分1件あたり約3分(含む)0件

見比べるときの4つの注意

  • 1件あたりにそろえる:忙しい月と暇な月では件数が違うので、合計の時間ではなく1件あたりで比べます。
  • 確かめる時間を含める:AIは間違えることがあるので、答えを人が確かめる時間がかかります。これを除くと、効果を大きく見せすぎます。
  • 同じ時期で比べる:決算月や繁忙期をまたぐと、仕事の中身が変わります。できるだけ似た時期どうしで比べます。
  • 担当が替わっていないかを見る:前は慣れたベテラン、後は新人、では比べられません。

数字が思ったほど下がらないときは、どこで時間がかかっているかを見ます。AIに頼む前の準備(資料を集める、貼りつける)に時間がかかっているなら、道具の形を変える余地があります。確かめる時間が長いなら、頼み方を直すか、確かめる所を絞れないかを考えます。

3か月後の数字で、次の手を決める

3か月後の見比べが終わったら、その仕事について次の手を決めます。目安は次の3つです。どれに当たるかは、最初に決めた目標と、使っている人の声をあわせて判断します。

3か月後の判断の目安
3か月後のようす次の手
目標に届いた・近づいた。使っている人も続けたいと言っている続ける。似た仕事や、ほかの部署へ広げる候補を選ぶ
時間は減ったが、確かめる手間やミスが気になる頼み方や道具の形を直して、もう1〜2か月測る
数字がほとんど変わらず、使う人も減っているその仕事でのAIはいったん止め、別の仕事に移る

広げるときは、同じ物差しで測れる仕事を選ぶと、報告の形をそのまま使えます。見積書で効果が出たなら、次は請求書や納品書のように、書き写しの多い書類が候補です。

数字にならない効果の書き方

効果には、数字にしにくいものもあります。「急な休みの日でも、ほかの人が見積書を作れた」「お客さまへの返事の言い回しがそろった」「月末に気が重くなくなった」。こうした変化は、報告から抜け落ちがちですが、続けるかどうかを決めるうえでは大事な材料です。

帝国データバンク水戸支店の調査(2026年3月)では、生成AIを活用している茨城県内の企業のうち、業務への効果が出ている(『効果あり』)と答えたのは78.1%でした。規模別では、中小企業で85.3%です。一方で、同じ問いに『どちらともいえない』と答えた企業も17.1%ありました。効果があるかどうかを、使っている会社自身も判断しかねている場合があるということです。前の記録と見比べの数字があれば、この「どちらともいえない」を減らせます。ただ、この『効果あり』も、多くは使っている人の実感です。実感を、ほかの人が読んで分かる言葉に直すのが報告の役目です。

場面と声で書く

  1. 効果を感じた場面を1つ、日付と一緒に書く(例:「10月14日、担当が休みの日に、別の人が見積書を3件作れた」)
  2. 使っている人の言葉を、そのまま1〜2行引く(例:「品番を写さなくてよくなって、気持ちが楽」)
  3. それがなかったら、どうなっていたかを書く(例:「前なら翌日まで待ってもらっていた」)
  4. 困ったこと、まだ使いにくい所も同じ数だけ書く

4つ目が大事です。よいことだけが並んだ報告は、読む側が疑います。「AIの答えに古い品番が混じったことが2回あった」「確かめる手間が増えた人もいる」と書いてあれば、残りの効果も信じてもらいやすくなります。次に直す所もはっきりします。

使っている人への聞き取りは3問だけ

声を集めるときは、長いアンケートを配るより、1か月後と3か月後に同じ3問を聞くほうが、変化が見えます。紙でも、チャットでの返事でも構いません。

  1. 前と比べて、その仕事は楽になりましたか(楽になった・変わらない・大変になった)
  2. いちばん助かった場面を1つ教えてください
  3. まだ使いにくい所、困った所を1つ教えてください

同じ問いを2回聞くので、「1か月後は大変になったと答えた人が、3か月後には楽になったと答えた」といった変わり方が分かります。慣れるまでの山を越えたかどうかが、ここで見えます。

例:報告を1枚にまとめる

例として、A4の紙1枚を上下に分け、上に数字(前・1か月後・3か月後の表)、下に場面と声(よかったこと3つ、困ったこと3つ)を置きます。いちばん下に「次の3か月でやること」を1行。役員会で配るなら、これで十分伝わります。

いばらきAIにご相談いただいたら

AX推進顧問では、月2回の定例で社内の仕事を知り、AIに任せる仕事と取り組む順番を決めて進めます。初回の定例で、AIを使える仕事の一覧と順番をお渡しします。データがあれば、その場で試作もお見せします。

定例のたびに進み具合を確かめ、次に任せる仕事を決めます。どの仕事で何を測るか、前の記録をどうとるかも、最初の仕事を決めるときに一緒に決められます。社内で効果を報告する場面があることを、最初にお伝えください。

顧問は最低3か月からお受けしています。社内の仕事を知り、最初の改善が形になるまでに、それくらいかかるためです。初回のご相談(無料・30分〜)はオンラインで、メールでお申し込みいただけます。

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まとめ:使い始める前に、記録表を1枚作る

  • 時間・ミス・待ち時間から、仕事に合う項目を1〜2つ選ぶ
  • 入れる前の1〜2週間、いつものやり方で記録しておく
  • 1か月後と3か月後に、1件あたり・確かめる時間込みで見比べる
  • 数字にならない効果は、場面と声で書き、困ったことも並べる

まずは、AIを使おうとしている仕事について、「日付/件名/始めた時刻/終わった時刻」の4列の記録表を1枚作ってみてください。明日から2週間、それを埋めるだけで、あとで効果を示せる材料がそろいます。記録表の右の端に「メモ」の欄を1つ足しておくと、忙しかった日や電話の多かった日を書き残せて、あとで見比べるときに迷いません。

出典・参考

よくある質問

効果をお金に換算したほうが、社内で通りやすいですか。

通りやすい場面はありますが、最初は時間とミスの数で十分です。お金に直すには、時給の置き方など前提が増え、そこで議論が止まりやすいためです。

時間の数字がそろっていれば、お金に直したい人は自分で計算できます。報告では、もとになる数字をまず正確に出すことを優先します。

3か月たっても数字が変わらないときは、やめたほうがよいですか。

やめる前に、どこで時間がかかっているかを見ます。AIに頼む前の準備や、答えを確かめる所に時間がかかっていることが多いためです。

準備の手間は道具の形を変えると減らせることがあり、確かめる手間は頼み方を直すと減ることがあります。それでも変わらなければ、その仕事はAIに向いていなかったと判断し、別の仕事に移るのも1つの答えです。

記録をとるのを、現場がいやがります。

記録の項目を減らすと続きやすくなります。始めた時刻と終わった時刻の2つだけでも、比べる材料になります。

記録は人を評価するためではなく、道具の出来を確かめるためだと、最初に伝えておくことも大事です。測る期間も、前後それぞれ2週間ほどに区切ります。

AIの利用料も、報告に入れたほうがよいですか。

入れたほうがよいです。減った時間と、かかっている利用料を並べて見ると、続ける判断がしやすくなるためです。

利用料は使う人の数や量で変わるものもあるので、月ごとの請求を記録表の横に書き添えておきます。広げるかどうかを決めるときにも、その記録が役に立ちます。

どのくらいの効果が出れば成功といえますか。

決まった目安はありません。仕事の中身と、最初に何を目指したかで変わるためです。

使い始める前に「1件あたりの時間を半分に」「差し戻しを0に」のように、社内で目標を1つ決めておくと、3か月後に判断しやすくなります。目標に届かなくても、どこまで近づいたかを見れば、続けるかどうかを決められます。

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