
「AIに入れたら、その情報がほかの会社の答えに出てくるらしい」。そんな話を聞いて、社内でのAIの利用を止めている会社があります。一方で、止めているはずなのに、社員の方が個人のスマートフォンで仕事のメールをAIに貼りつけている、ということも起きています。
情報が漏れる道すじは、AIの会社に学習されることだけではありません。アカウントの扱い、会話の共有、作った道具の設定など、いくつかの道があります。道すじが分かれば、どこを確かめればよいかもはっきりします。
この記事では、漏えいが起きる3つの道すじを整理し、アカウントと設定で確かめること、社員の使い方で防ぐこと、業務ツールを作るときに道具の側で防ぐことを説明します。
漏えいが起きる3つの道すじ
帝国データバンク水戸支店の調査(2026年3月)では、茨城県内の企業が挙げた生成AI活用の懸念・課題として、「情報漏洩のリスク」が29.3%ありました。心配の大きさに比べて、何が、どこから漏れるのかが具体的に語られることは多くありません。まずは道すじを3つに分けて見ます。
生成AIまわりの情報漏えいの3つの道すじ| 道すじ | 起きうること | 主な防ぎ方 |
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| 1. AIの会社の側 | 入れた内容が、サービスの改善のための学習に使われる。サービスの中に一定期間保存される | 学習に使わない扱いの契約・設定を選ぶ。入れない情報を決める |
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| 2. アカウントと共有 | 個人のアカウントで仕事の情報を扱う。会話を共有する機能で、外から見られる。辞めた人のアカウントが残る | 会社の名義のアカウントにそろえる。共有の決まりを作る。使う人を管理する |
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| 3. 出てきた答えや道具から外へ | AIが作った文に別のお客さまの情報が混じったまま送る。作った道具が、だれでも開ける設定になっている | 送る前に人が確かめる。道具の公開の範囲を限る |
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冒頭の「ほかの会社の答えに出てくる」は、1つ目の道すじの話です。入れた内容が学習に使われる扱いのサービスでは、理屈の上では起こりえます。だからこそ、学習に使わない扱いを選ぶことが守りの第一歩になります。ただ、実際の漏えいは、2つ目や3つ目の、身近な道すじから起きることも少なくありません。
身近な例:前のお客さまの情報が混じる
3つ目の道すじで起きやすいのが、1つの会話の中で何人ものお客さまの話を続けてしまうことです。AIは同じ会話の中の前のやり取りを覚えているので、Bさんへの返事の下書きに、さっき話していたAさんの名前や注文の数が混じることがあります。
防ぎ方は単純で、お客さまが替わるたびに新しい会話を始めることです。そして送る前に、宛先の相手以外の名前や数字が入っていないかを見ます。設定では防げない、使い方の守りです。
国の注意も「確かめること」を求めている
個人情報保護委員会は令和5年6月2日の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」で、事業者が個人データを含む指示を入れる場合には、AIの会社がその個人データを機械学習に使わないことなどを十分に確かめるよう求めています。入れてよい情報の分け方そのものは、別の記事でくわしく扱いました。
生成AIに入力してよい情報の決め方
アカウントと設定で確かめること
1つ目と2つ目の道すじは、使い始める前の確かめで、多くを防げます。次の表の項目を、使うサービスごとに1つずつ確かめます。
使い始める前に、アカウントと設定で確かめること| 確かめること | なぜ確かめるか | どこで確かめるか |
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| 法人向けの契約か、個人向けか | 同じサービスでも、入れた内容の扱いが違うことがある | 契約しているプランの説明、利用規約 |
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| 入れた内容が学習に使われない扱いか | 1つ目の道すじを防ぐ | データの扱いの説明、設定の画面 |
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| 入れた内容がどのくらいの期間保存されるか | 学習に使われなくても、保存はされることがある | データの扱いの説明 |
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| 会話を共有する機能があるか、だれが使えるか | 共有したつもりのない人に見られることを防ぐ | 共有の設定、管理者の画面 |
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| ログインに、パスワードのほかの確かめ(二段階の確認)を付けられるか | パスワードが漏れても、すぐには入られない | アカウントの安全の設定 |
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| 管理者が、使う人を足したり止めたりできるか | 辞めた人のアカウントを止められる | 管理者の画面、法人向けの説明 |
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設定の名前や画面の場所は、サービスの更新でよく変わるので、ここでは書きません。使うサービスの最新のヘルプや規約で確かめてください。確かめたら、何を、いつ、だれが確かめたかを1行記録しておき、半年に一度ほど同じ確かめをくり返します。
確かめの手順
- 社内で使っている、または使いたいAIのサービスを全部書き出す(社員の方に聞くと、思わぬものが出てきます)
- 使ってよいサービスを1〜2つにしぼる
- しぼったサービスについて、上の表を1行ずつ確かめ、記録する
- 会社の名義のアカウントを用意し、使う人の一覧を総務が持つ
- 二段階の確認を付け、共有の機能の決まりを決める
- 使ってよいサービスと、それ以外は使わないことを社員に伝える
1つ目の「全部書き出す」で、社員の方が個人で入れている翻訳のアプリや、文書づくりのソフトに付いているAIの機能が見つかることがあります。ふだん使っているソフトに、あとからAIの機能が加わっている場合もあるので、よく使うソフトのお知らせにも目を通しておきます。
入社と退社の手続きに、AIのアカウントを入れる
辞めた人のアカウントが残ったままになるのは、止める手順がどこにも書かれていないからです。社員の方が辞めるときの手続きの一覧(鍵の返却、メールの停止など)に、「AIのアカウントを止める」を1行足しておきます。入社のときの一覧には「AIのアカウントを渡し、社内ルールの紙を渡す」を足します。
止めるときは、そのアカウントに残っている会話の中に、引き継ぐべき仕事の記録がないかを先に確かめます。仕事の記録はAIの会話の中ではなく、社内の決まった場所に残す、と普段から決めておくと、止めるときに迷いません。
社員の使い方で防ぐこと
設定をどれだけ整えても、使う人の動き方で漏れることがあります。社員の方に守ってもらうことは、多くしすぎず、次の5つにしぼります。
- 仕事の情報は、会社のアカウントだけで扱う。個人のアカウントや個人のスマートフォンのAIには入れない
- 会社が使ってよいと決めたサービス以外の、AIのアプリや、ブラウザに足す小さな追加機能を、自分の判断で入れない
- 会話の共有の機能は、使う前に聞ける人に相談する
- AIが作った文を送る前に、別のお客さまの名前や数字が混じっていないかを見る
- うっかり入れてしまったら、すぐに聞ける人へ連絡する(連絡した人は責めない)
無料のAIアプリに気をつける
「無料で使える便利なAI」とうたうアプリやブラウザの追加機能の中には、入れた内容の扱いがはっきりしないものもあります。画面の文字を読み取る、メールを要約するといった機能は、仕組みの上で、画面やメールの中身をそのアプリに渡すことになります。会社のパソコンには、総務が確かめたものだけを入れる決まりにしておきます。
画面の前の漏えいもある
外出先の喫茶店や電車の中で、お客さまの情報をAIに入れて作業していると、画面を後ろからのぞかれることもあります。AIに限った話ではありませんが、AIで作業する時間が増えるほど、こうした場面も増えます。お客さまの情報を扱う作業は社内で、と決めている会社もあります。
5つの決まりは、くり返し伝える
決まりは、一度伝えただけでは薄れていきます。新しく入った方には入社の日に、ほかの方には半年に一度、5分ほどでおさらいします。そのときに、ここ半年で聞ける人に届いた質問や、うっかりの例を(名前を出さずに)紹介すると、自分ごととして聞いてもらえます。
例:うっかり入れてしまったときの流れ
例として、営業の社員が、お客さまの住所が入ったままのメールを、会社のアカウントのAIに貼りつけてしまったとします。気づいた時点で聞ける人に連絡し、聞ける人はその会話の履歴を消す、使っているサービスの扱い(学習に使わない設定か、保存の期間)を記録と照らして確かめる、何を入れたかを記録する、の3つを行います。社員の方を責めず、なぜ起きたかを聞き、伏せる手順を見直します。
社員の方に気をつけてもらうことには限りがあります。同じ仕事を毎日くり返すなら、AIを使う業務ツールを作り、道具の側で漏えいを防ぐ形にすると、気をつけることが減ります。
業務ツールの側でできる守り(例)| 守り | どう作るか | 防げること |
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| 伏せてから渡す | AIに渡す前に、名前・電話番号・メールアドレスを道具が置きかえる | 1つ目の道すじ。伏せ忘れ |
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| 見られる人を限る | ログインした社員だけが開ける。部署ごとに見られる範囲を分ける | 2つ目の道すじ。関係ない人に見られること |
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| 置き場所を自社の名義に | 道具・AI・データの保存先のアカウントを御社の名義で作る | 作った人がいなくなっても中身を管理できる |
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| 合い鍵を表に出さない | AIのサービスを使うための合い鍵(APIキー)を、画面や共有のファイルに書かない | 合い鍵が漏れて、他人に使われること |
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| 記録を残す | だれが、いつ、何をしたかを道具が記録する | うっかりや不正に早く気づく |
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4つ目の「合い鍵」は、聞き慣れない言葉かもしれません。業務ツールがAIのサービスを使うときには、そのサービスに「この道具は使ってよい」と知らせる合い鍵のような文字列を使います。これが漏れると、他人がその合い鍵で御社の契約のAIを使えてしまいます。作る人に、合い鍵をどこに置いているかを聞いておくと安心です。
例:問い合わせの返事を作る道具での守り
例として、メールで届いた問い合わせから返事の下書きを作る道具なら、道具が受け取ったメールの名前・電話番号・住所を「お客さま」「(電話番号)」に置きかえてからAIに渡し、返ってきた下書きに、元の名前を道具が戻します。AIの会社に届くのは、伏せたあとの文だけです。開けるのはログインした営業部の社員だけにし、だれがいつ下書きを作ったかが残るようにします(説明のための例です)。
作る人に聞いておくこと
- AIに渡す前に、どの情報を伏せる作りになっているか
- 道具はだれが開けるか。社外の人が開けることはないか
- 道具・AI・データの保存先は、だれの名義のアカウントか
- 合い鍵(APIキー)はどこに置いているか
- だれが何をしたかの記録は残るか。だれが見られるか
道具を使い続けるうちに、使う人が増えたり、つないでいるサービスの扱いが変わったりします。作ったあとも、守りが今の使い方に合っているかを見直す人を決めておきます。
いばらきAIにご相談いただいたら
いばらきAIの業務ツールの開発では、話を聞いたエンジニアがそのまま作り、試作を見ながら形を決めます。AIに読ませる情報と読ませない情報は、始める前にお客さまと一緒に決め、入れた内容をAIの会社が学習に使わない設定にしてから使います。お客さまの個人情報を扱う仕組みは、扱い方を決めてから作ります。アカウントは御社の名義で作り、説明のスライドと動画もお渡しします。
作ったあとは、保守で、不具合の対応、小さな直し、問い合わせの窓口をお引き受けします。使う人が増えた、使うAIのサービスが変わった、といったときの見直しもご相談いただけます。
初回のご相談(無料・30分〜)はオンラインで行います。メールで、気になっている情報の扱いや、作りたい道具を一言お送りください。
業務ツールの開発について見る
保守について見る
まとめ:社内で使っているAIを、全部書き出してみる
- 漏えいの道すじは、AIの会社の側・アカウントと共有・答えや道具から外へ、の3つ
- 使い始める前に、法人向けの規約・学習の扱い・保存の期間・共有・使う人の管理を確かめる
- 社員の方には、会社のアカウントだけを使い、見知らぬAIのアプリを入れないことを伝える
- 毎日の仕事なら、伏せる・限る・自社の名義にする、を道具の側で行う
まずは、社内で使われているAIのサービスやアプリを、社員の方に聞いて全部書き出してみてください。思っていたより多く出てきたら、それが最初に手を打つ所です。