社内の決めごとと学び方公開 約10分で読めます

一部の人しか使わないAIを、全員に広げるには?

生成AIを社内に浸透させる順番|使う人と使わない人の差が開く前に

執筆いばらきAI編集部

この記事でわかること

  • 差が開くと、仕事の偏り・出来のばらつき・隠れた使い方が起きる
  • まず、すでに使っている人のやり方を、仕事の名前ごとに集める
  • 集めたやり方を、穴埋めの頼み方にして、仕事の名前で引ける場所に置く
  • 毎日だれもが同じ流れでする仕事は、道具にして、頼み方を覚えなくても使える形にする
並んでノートパソコンを使う2人の手元

営業のAさんは、見積書に添える文も、議事録のまとめも、AIで手早く仕上げている。隣の席のBさんは、同じ仕事をいまも一から手で書いている。Aさんに聞けばいいのに、なんとなく聞きにくい。社内でAIを使っているのは、気づけばAさんを含めた数人だけ。

生成AIは、使う人が自分で試しながら上達していく道具です。そのため、放っておくと、得意な人はどんどん使い、そうでない人は手をつけないまま、差が開いていきます。差が開いてから埋めるのは、開く前より手間がかかります。

この記事では、使う人と使わない人の差が開くと何が起きるかを見たうえで、使っている人のやり方を集め、仕事ごとの頼み方を共有し、最後は道具にして全員が同じ形で使う、という順番を説明します。

差が開くとどうなるか

使う人と使わない人の差は、多くの会社で起きています。帝国データバンク水戸支店の調査(2026年3月)では、生成AIを活用している茨城県内の企業41社のうち17.1%が、悪影響として「AIを使いこなせる社員と使いこなせない社員の間で、能力や成果の格差が拡大した」を挙げました。同じ調査で、この答えは大企業では28.6%と、全体より高くなっています。

中小企業基盤整備機構の調査(令和8年3月)でも、AIを導入した中小企業が挙げた導入後の運用課題として、「従業員による活用が進まない」が28.9%ありました。入れたけれど、一部の人しか使っていない。これは珍しい悩みではありません。

使う人と使わない人の差が開くと起きること
起きること社内でのようす
仕事の偏りAIで速く仕上げる人に、文書づくりの仕事が集まる。その人だけが忙しくなる
出来のばらつき同じお客さまへの文でも、書く人によって言い回しや詳しさがまちまちになる
隠れた使い方使っている人が、個人のやり方で、決まりの外のサービスを使っている
使わない人の不安「自分の仕事がなくなるのでは」「今さら聞けない」と感じ、ますます手が遠のく

3つ目の「隠れた使い方」は、情報の守りの面で見過ごせません。得意な人ほど、自分で見つけた便利なサービスを使い始めます。社内に共有の場がないと、何を、どこに入れているかが見えなくなります。差を縮める取り組みは、使い方を表に出す取り組みでもあります。

使わない理由は、反対だからとは限らない

つくば市は、筑波大学との共同研究を兼ねて職員向けの生成AIを導入しました。地方自治研究機構の令和5年度の先進事例によると、令和5年10月時点で全職員の3分の1程度が利用していた一方、庁内アンケートでは「使ったことがない」と答えた職員も相当数いて、使う人と使わない人で大きく二分していることがうかがえる、とされています。

同じ資料は、使ったことがない職員の中にも生成AIに期待している職員がいたこと、そして「使わない=ネガティブな印象」とは限らないと捉え、まずは知ってもらう・使ってもらう取り組みが必要としていることも紹介しています。身近な業務を例にした活用事例や、頼み方の研修を充実させる必要があるとも書かれています。会社でも同じです。使わない人の多くは、反対なのではなく、自分の仕事でどう使えばよいかが見えていないだけです。

「仕事がなくなる」不安には、先に答えておく

使わない人の中には、口には出さなくても「AIが広まったら、自分の仕事がなくなるのでは」と感じている人もいます。この不安を残したまま「使って」と言っても、手は伸びません。

広げ始める前に、社長から一言、何のためにAIを使うのかを伝えておきます。たとえば「書き写しやまとめの手間を減らして、お客さまと話す時間や、考える仕事に時間を回すため」。目的がはっきりすると、AIは自分の仕事を奪うものではなく、手間を引き受けてくれるものとして受け取られやすくなります。

使っている人のやり方を集める

差を縮める最初の一歩は、研修でも新しい道具でもなく、すでに使っている人のやり方を集めることです。社内には、自社の仕事に合った使い方を、もう見つけている人がいます。その人のやり方は、外の講座の例より、隣の席の人にとってずっと分かりやすい見本になります。

  1. だれが、どの仕事でAIを使っているかを聞く。名前を書かなくてよい簡単なアンケートにすると、隠れた使い方も出てきやすい
  2. 使っている人に15分ずつ時間をもらい、実際に使うところを横で見せてもらう
  3. 見せてもらいながら、「仕事の名前」「AIに頼む前にしていること」「頼み方の文」「出てきたものをどう確かめているか」の4つを書き取る
  4. 使っているサービスが、会社で決めたものかどうかを確かめる。決まりの外なら、決まりの中のサービスで同じことができるかを試す
  5. 集めたやり方を、仕事の名前ごとに並べる

3つ目の「AIに頼む前にしていること」が、意外に大事です。上手な人は、頼む前に資料をそろえたり、伝えたいことを箇条書きにしたりしています。頼み方の文だけを見てまねしても同じ出来にならないのは、この前の準備が抜けているからです。

例:見せてもらって分かったこと

例として、議事録をAIでまとめている総務の方に見せてもらったところ、AIに頼む前に、会議の録音の文字起こしに「決まったこと」「宿題」「次回」の3つの見出しを手で書き足していました。この一手間で、AIのまとめが格段に読みやすくなっていたのです。頼み方の文だけを共有していたら、この工夫は伝わりませんでした(説明のための例です)。

使っている人を「先生」にしすぎない

集める過程で、上手な人に「みんなに教えて」と頼みたくなります。ただ、その人に質問が集中すると、本来の仕事が回らなくなり、仕事の偏りがかえって強まります。上手な人にお願いするのは、やり方を見せてもらうところまで。整理して共有するのは、担当の方が受け持ちます。

仕事ごとの「頼み方」を共有する

集めたやり方は、ほかの人もまねできる形に直して共有します。ポイントは、AIの使い方として並べるのではなく、「仕事の名前」で引けるようにすることです。使わない人は「AIで何ができるか」ではなく、「自分のこの仕事が楽になるか」を知りたいからです。

頼み方を「穴埋め」にする

上手な人の頼み方の文を、そのまま共有しても、自分の仕事に置きかえるのが難しい人もいます。変わる所を空欄にして、穴埋めの形にします。

例:穴埋めの頼み方

例として、「次の会議の文字起こしを、『決まったこと/宿題(担当と期限)/次回』の3つの見出しで、それぞれ箇条書きにしてください。会議の名前は【 】、日付は【 】です。文字起こしにないことは書かないでください。」のように、変わる所だけを【 】にします。使う人は【 】を埋めて、文字起こしを貼るだけです。

頼み方の共有の形と、向くとき
共有の形よいところ気をつける所
共有フォルダに、仕事の名前ごとの1枚を置く仕事の名前で探せる。書き足しやすい置いただけでは見られない。場所を伝え続ける
チャットの決まった場所に貼る気軽に出せる。質問もその場でできる流れて見つけにくくなる。月に一度、フォルダに移す
朝礼や部署の集まりで1つずつ見せる使うところを目で見られる一度に多くは伝えられない。1回1つにする
月に1回の短い勉強会使っている人と使わない人が話せる教える人を固定しない

1つの形にこだわらず、「仕事の名前ごとの1枚を共有フォルダに置き、朝礼で週に1つ見せる」のように組み合わせます。研修のあとに残す見本集の作り方は、研修の選び方の記事でも扱いました。

社員向けAI研修の選び方

最初に共有するのは、だれもがする仕事

共有する仕事の順番は、使う人の多い仕事からにします。メールの返事、議事録、社内のお知らせのように、部署を問わずだれもがする仕事です。一部の部署だけの仕事は、そのあとにします。最初の1つで「自分の仕事も楽になった」と感じる人が増えると、次の共有が届きやすくなります。

使った人の声を、やり方を見せてくれた人に返す

共有した頼み方を使った人から「助かった」「ここを変えたらもっとよくなった」という声が出たら、やり方を見せてくれた人にも伝えます。自分の工夫が役に立ったと分かれば、次の工夫も見せてもらいやすくなります。直した所は、共有の1枚に書き足します。こうして、1枚が少しずつ社内のやり方として育っていきます。

道具にして全員が同じ形で使う

穴埋めの頼み方を共有しても、使う人によって、貼る資料の量や確かめ方が違い、出来にばらつきが残ることがあります。毎日、だれもが同じ流れでする仕事なら、最後の段階として、道具にしてしまう方法があります。

ここでいう道具とは、決まった入力欄に書類や文を入れてボタンを押すと、裏で決まった頼み方がAIに渡り、決まった形の結果が出てくる、社内専用の小さなアプリのことです。使う人は頼み方を覚える必要がありません。

頼み方の共有と、道具にすることの違い
見る所頼み方の共有道具にする
使う人が覚えること頼み方の文、貼る資料、確かめ方入力欄に入れてボタンを押すこと
出来のばらつき使う人によって残る形がそろう
入れてよい情報の守り使う人が気をつける道具の側で、名前を伏せるなどができる
確かめる所使う人が覚えておく画面に確かめる欄を出せる
始めるまでの手間小さい作る手間がかかる

道具にする仕事の選び方

  1. 頼み方を共有した仕事のうち、使う人が多く、毎日か毎週ある仕事を選ぶ
  2. 使っている人どうしで、出来のばらつきが気になっているかを聞く
  3. 入れる情報に、お客さまの名前など気をつけたいものが含まれるかを見る
  4. 3つに当てはまるものから、道具にする候補にする

例:日報のまとめを道具にした場合

例として、現場の5人がそれぞれ穴埋めの頼み方で日報をまとめていたところ、人によって詳しさがまちまちで、社長が読みにくいという声がありました。そこで、日報の文を入れてボタンを押すと、「作業/困ったこと/明日の予定」の3つにそろった形で出てくる道具にします。使う人は頼み方を覚えなくてよく、出てきた結果の「困ったこと」を本人が確かめてから出すだけです(説明のための例です)。

道具にすると、使わなかった人も「ボタンを押すだけなら」と使い始めることがあります。最初に差を縮めるのは研修や共有ですが、最後に差をなくすのは、だれが使っても同じ結果になる道具です。

いばらきAIにご相談いただいたら

いばらきAIのAI研修は、AIの使い方を全6回で1つずつ身につける研修です。1〜5名・1回2時間・約2か月、オンラインで、演習の題材はメールの返事や議事録など、ふだんの事務から選びます。研修の中で、ほかの社員の方へ使い方を広げる進め方も一緒に考えます。

だれもが同じ形で使える道具にしたい仕事があれば、業務ツールの開発でお作りします。話を聞いたエンジニアがそのまま作り、試作を見ながら形を決めます。アカウントは御社の名義で作り、説明のスライドと説明の動画もお渡しするので、新しく入った方にも使い方を伝えられます。

初回のご相談(無料・30分〜)はオンラインで行います。メールで、社内でAIを使っている人の様子や、広げたい仕事を一言お送りください。

AI研修について見る

業務ツールの開発について見る

まとめ:まず、使っている人に15分見せてもらう

  • 差が開くと、仕事の偏り・出来のばらつき・隠れた使い方が起きる
  • 使わない人の多くは反対ではなく、自分の仕事での使い方が見えていないだけ
  • 使っている人のやり方を、前の準備まで含めて集め、穴埋めの頼み方にして共有する
  • 毎日だれもがする仕事は、道具にして全員が同じ形で使えるようにする

まずは、社内でAIを使っている人を1人見つけ、15分だけ、実際に使うところを横で見せてもらってください。その15分で書き取った4つのこと(仕事の名前・前の準備・頼み方・確かめ方)が、社内に広げる最初の1枚になります。

出典・参考

よくある質問

AIを使いたがらない社員に、使うよう命じるべきですか。

命じるより、自分の仕事が楽になる見本を見せるほうが効きます。使わない理由は、反対よりも、自分の仕事での使い方が見えていないことが多いためです。

その人がふだんしている仕事の、穴埋めの頼み方を1つ渡して、一緒に一度試してみます。楽になったと感じれば、次からは自分で使い始めます。

AIで仕事を速く終えた社員に、仕事が集まりすぎるのが心配です。

やり方を共有すると、偏りは小さくなります。ほかの人も同じ速さで仕上げられるようになるためです。

上手な人には、やり方を見せてもらうところまでをお願いし、共有の作業は担当の方が受け持ちます。上手な人の負担を増やさない形にしておくことが大事です。

どのくらいの人が使えば、浸透したといえますか。

決まった目安はありません。人数より、だれもがする仕事でAIを使う形が決まっているかで見るのがおすすめです。

たとえば、議事録とメールの返事は全員が同じ頼み方か道具で作っている、という状態なら、使う人の数が少なくても、差が開く心配は小さくなります。

道具を作るのは、共有の前でもよいですか。

仕事の流れがはっきりしているなら、先に作ることもできます。ただ、使っている人のやり方を集めてから作るほうが、現場に合った道具になりやすくなります。

集める過程で、上手な人の前の準備や確かめ方が分かり、それを道具の画面に入れられるためです。

社長自身がAIをほとんど使っていません。広げられますか。

広げられますが、社長が一度でも使ってみせると、広がり方が変わります。上の人が使っていると、使うことが仕事の一部だと伝わるためです。

毎日使う必要はありません。共有した頼み方を1つ、朝礼で社長が試してみせるだけでも、社員の方の受け取り方は変わります。

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事前に書類をお送りいただければ、その書類で試作をお見せします。ふだん使っている表や紙の書式など

ご相談の流れ

  1. メールを送る会社名と困っていることを一言お送りください。
  2. 初回のご相談返信で日程を決め、オンラインでお話をうかがいます。
  3. ご提案・お見積もり取り組むことと金額を書面でお出しします。
  4. ご契約・開始ご納得いただけたら始めます。