
社員の何人かがChatGPTを使い始め、メールの下書きやお知らせ文は早くなった。ところが、毎朝の売上の集計は、相変わらず担当の人がレジや販売管理の記録を表計算に貼りつけ、手で整えている。ChatGPTに頼んでみたものの、毎朝データを貼って同じ頼み方を打ち込むのでは、かえって手間が増えた。そんな声をうかがうことがあります。
ChatGPTのような、画面で文章を打ち込んで頼む形のAI(対話型のAI)は、使い始めのハードルが低い反面、向いている仕事と向いていない仕事がはっきりしています。
この記事では、対話型のAIで足りる仕事と、AIを組み込んだ専用の道具にしたほうがよい仕事の分かれ目を、3つの場面と毎朝の集計の例で説明します。
ChatGPTで足りる仕事
帝国データバンクの茨城県内の調査では、生成AIの主な活用業務は「文章の作成・要約・校正」が46.3%で最も多く、「情報収集」22.0%、「企画立案時のアイデア出し」12.2%と続きました。一方で、「データの集計・分析」と「コード生成などのプログラミング支援」は、いずれも7.3%にとどまっています。
県内の会社でも、いまの使われ方は文章の仕事が中心ということです。そして、文章の仕事の多くは、対話型のAIで十分に足ります。理由は、次のような特徴があるからです。
- 1回ごとに中身が違う(取引先へのお詫びのメール、季節のお知らせ、社内の案内など)
- 結果を人が読んで、その場で直してから使う
- 1回の量が少なく、画面に貼りつけて頼める
- 頼む人と使う人が同じ(自分のメールを自分で直す)
こうした仕事は、専用の道具を作るより、社員の方が対話型のAIへの頼み方を覚えたほうが早く効果が出ます。会議のメモの要約、長い資料の読み下し、言い回しの手直しなども同じです。
ただし、どの仕事でも、AIの答えは間違えることがあります。外に出す文や数字は、人が読んで確かめてから使ってください。
足りなくなる3つの場面
対話型のAIで手間が残るのは、だいたい次の3つの場面です。どれか1つでも当てはまる仕事は、専用の道具の候補になります。
1. 毎日くり返す
毎朝の集計、毎日の日報のまとめ、毎週の在庫の確認のように、同じ仕事を決まった時刻にくり返す場面です。対話型のAIでは、そのたびにデータを貼り、同じ頼み方を打ち込む必要があります。頼み方を少し変えただけで結果の形が変わることもあり、昨日と今日の表の形がそろわない、ということが起きます。
2. 量が多い
100件の注文、1か月分の伝票、数百行の売上の記録のように、1回に扱う量が多い場面です。画面に一度に貼れる量には限りがあり、分けて頼むと、どこまで済んだかを人が数えることになります。大量の行のなかで1行だけ抜けても、画面では気づきにくくなります。
3. 社内の情報を使う
自社の品目の一覧、取引先ごとの決まり、社内の規程のように、社内にしかない情報を使って答えてほしい場面です。対話型のAIは、渡されていない社内の事情を知りません。毎回その情報を貼るのは手間がかかるうえ、どの情報をAIに渡してよいかを、使う人ごとに判断することになります。
個人情報保護委員会は、生成AIサービスに個人情報を入れるときは利用目的の範囲内か、入れた情報が学習に使われないかを確かめるよう注意を呼びかけています。社員が思い思いに社内の情報を貼る使い方は、この確かめが人によってばらつきやすい点にも注意が要ります。
専用の道具にすると変わること
ここでいう専用の道具とは、AIを中に組み込んで、決まった仕事だけをこなすように作った、自社用の小さなアプリや仕組みのことです。使う人はAIに頼み方を打ち込むのではなく、ボタンを押したり、ファイルを置いたりするだけで済みます。
対話型のAIと、AIを組み込んだ専用の道具の違い| 見ること | 対話型のAIで頼む | 専用の道具にする |
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| だれが始めるか | 使う人が、その都度画面を開いて頼む | 決まった時刻に自動で動く、またはボタン1つ |
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| 入力 | データを貼り、頼み方を打ち込む | いつものファイルを決まった場所に置く |
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| 結果の形 | 頼み方しだいで毎回少し変わる | いつもの表や書式と同じ形で出る |
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| 結果の置き場所 | 画面の会話の中に残る | 共有の表やフォルダに残り、ほかの人も見られる |
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| 確かめ方 | 使う人が全体を読む | おかしな値や読み取れなかった行に印が付き、そこだけ人が見る |
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| 社内の情報 | 毎回貼る(何を貼るかは人まかせ) | 使ってよい情報だけを道具に入れておく |
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| 担当が替わったとき | 頼み方は前の担当の手元に残る | 道具の使い方は同じ。説明を見れば引き継げる |
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大きな違いは、頼み方が人の手元ではなく道具の中に入ることです。担当が休んでも替わっても、同じ結果が同じ形で出てきます。
専用の道具に向かない仕事
反対に、1回ごとに中身が違う文章の仕事や、月に1回しか出てこない仕事を専用の道具にしても、作る手間に見合わないことが多くなります。そうした仕事は、対話型のAIへの頼み方を社内で共有するほうが向いています。
例:毎朝の売上の集計を道具にする
例:店舗が4つある小売の会社の毎朝の集計
例として、店舗が4つある小売の会社で、経理の担当が毎朝、各店のレジから出した前日の売上の記録を表計算にまとめ、店ごと・品目の分類ごとの表を作って社長に送っていたとします。かかる時間は毎朝40分ほど。担当が休むと、その日の表は出ません。対話型のAIで試したところ、4店分の記録を貼って頼むと表はできたものの、分類の名前が日によって揺れ、毎朝の頼み方の打ち込みと確かめで、時間はあまり変わりませんでした。
この仕事は、毎日くり返す・量が多い・社内の分類の決まりを使う、の3つの場面すべてに当てはまります。専用の道具にするなら、次のような順で作ります。
- いつも社長に送っている表を1枚もらい、出てくる形を決める
- 各店のレジから出る記録の形と、置き場所を決める(共有フォルダの決まった場所に、毎朝置く)
- 品目を分類に分ける決まりを、社内の一覧から道具に入れておく
- 記録が置かれたら、AIが分類を当てはめ、いつもの形の表を作るようにする
- 分類に当てはまらない品目や、前の日と比べて極端に多い・少ない数字には印を付け、担当が見る所を絞る
- できた表を、決まった時刻に社長と担当へ届ける
担当の仕事は、表をいちから作ることから、印の付いた所を確かめることに変わります。どの数字に印を付けるか、どこまでAIに任せるかは、試作を見ながら決めます。
なお、レジや販売管理のソフトによっては、すでに集計の機能がある場合もあります。道具を作る前に、いま使っているソフトでできることを確かめておくと、作る範囲を小さくできます。
道具にする前に、対話型のAIでできる工夫
3つの場面に当てはまる仕事でも、すぐに道具を作る必要はありません。対話型のAIの使い方を少し変えるだけで、手間が減ることもあります。道具にするかどうかは、次の工夫を試してから決めても遅くありません。
- 頼み方を文にして残す:毎回打ち込んでいる頼み方を、社内の共有の場所に文として置き、貼りつけて使う
- 見本を添える:「この形で」と、いつもの表や文の見本を1つ一緒に渡すと、結果の形がそろいやすくなる
- 出てくる形を指定する:列の名前と並び順、分類の名前の一覧を、頼み方の中に書いておく
- 確かめる所を頼む:合計が元の記録と合っているか、分類できなかった行はどれかを、最後に一緒に書き出してもらう
例の毎朝の集計なら、分類の名前の一覧を頼み方に入れるだけで、日によって名前が揺れる問題は小さくなります。それでも毎朝のデータの貼りつけと確かめに時間が取られるなら、そこが道具にする分かれ目です。
こうした工夫を重ねた頼み方は、道具を作るときにもそのまま設計図になります。試した時間は無駄になりません。
道具にする仕事の見つけ方
どの仕事を道具にするかは、社員の方が対話型のAIをどう使っているかを見ると見つかります。次の手順で候補を探してください。
- 対話型のAIを使っている社員に、この1か月で何に使ったかを書き出してもらう
- そのなかで、毎回ほとんど同じ頼み方を打ち込んでいるものに印を付ける
- 印の付いた仕事について、回数(毎日・毎週・毎月)と、1回に扱う量を書く
- 社内の情報を毎回貼っているかどうかを書く
- 毎日・大量・社内の情報のうち、当てはまる数が多い仕事から、道具の候補にする
候補が見つかったら、対話型のAIで試したときの頼み方と、そのとき使ったデータの見本を残しておいてください。道具を作るときの、いちばんの手がかりになります。
いばらきAIにご相談いただいたら
初回のご相談(無料・30分〜)はオンラインで行います。対話型のAIで試している仕事や、毎日手で回している集計をうかがい、その場でAIを使って、動くものを1つお見せします。
道具にしたほうがよい仕事は、業務ツールの開発でお受けします。話をうかがったエンジニアがそのまま、いつもの表や書類を見本に、試作を見ながら作ります。動く道具と一緒に、説明のスライドと説明の動画をお渡しし、アカウントは御社の名義で作ります。作ったあとは、保守として不具合の対応・小さな直し・問い合わせの窓口をお引き受けします。
どの仕事から道具にするかを決めたいときは、AX推進顧問(月2回の定例・最低3か月)で、AIを使える仕事の一覧と取り組む順番から一緒に決めます。
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まとめ:同じ頼み方を打ち込んでいる仕事に印を付ける
- 1回ごとに中身が違う文章の仕事は、対話型のAIで足りることが多い
- 毎日・大量・社内の情報の3つの場面では、専用の道具にすると手間が減る
- 専用の道具は、頼み方が道具の中に入り、だれが使っても同じ形で結果が出る
まずは、対話型のAIを使っている社員に、この1か月で何に使ったかを聞いてみてください。毎回同じ頼み方を打ち込んでいる仕事が、専用の道具の最初の候補です。