
「DXと言われても、何から始めればいいのか分からない。まずは公的な所で話を聞いてみたい」。民間の会社に相談する前に、県や公的な機関の窓口を知っておきたい、と考える社長や担当の方は多いと思います。
DXは、デジタルの道具を使って、仕事の進め方そのものを変えることを指します。茨城県にも、DXやAIについて相談したり、学んだりできる公的な窓口がいくつかあります。ただ、名前が似ていて、どこで何を聞けるのかが分かりにくいのも事実です。検索しても、県の資料のPDFや、委託先の会社の発表がばらばらに出てくるだけで、全体を一度に見られるページはなかなか見つかりません。
この記事では、県の令和8年度の取り組みを確かめたうえで、主な窓口とそれぞれに聞けること、講座やワークショップの使い方、窓口に行く前に用意しておくと話が早いものを紹介します。
茨城県のDX・AIの取り組み(令和8年度)
茨城県の産業戦略部は、令和8年度の事業として「デジタル技術を活用した生産性向上支援事業費」を新しく設けました。県の資料では、その目的を「生成AIやIоTなどデジタル技術の活用を支援することで、県内中小企業等の生産性向上を後押しし、競争力の強化と持続的な成長を図る」と書いています。
この事業の1つとして、県は「見積作成省力化に関するAI技術活用支援等業務」を行っています。受託した水戸市のユードムの発表によると、2026年11月に中間報告会、2027年1月に結果報告会を予定しています。見積書づくりという、多くの会社に共通する事務にAIを使う取り組みです。
人を育てる取り組みもあります。県の「データ分析・AI活用人材育成業務」を受けたピープルドットは、2026年6月26日、県内に事業所を置く企業の従業員や経営者などを対象に、受講生を「100名程度」募集すると発表しました。講座は2026年7月から2027年3月までで、短い動画と小テストを中心にしたオンラインの学習に、個別の勉強会などを組み合わせる形です。
こうした取り組みが増えている背景には、県内の会社の迷いがあります。帝国データバンク水戸支店の県内調査(2026年3月)では、生成AIを使ううえでの心配や課題の1位が「生成AIを活用すべき業務の範囲」(42.2%)、2位が「専門人材・ノウハウ不足」(40.8%)でした。どの仕事に使えばよいか分からない、社内に詳しい人がいない、という2つの迷いに、県の講座や報告会は「ほかの会社の例を知る」「基礎を学ぶ」という形で応えようとしています。
県の事業は年度ごとに中身が変わります。募集の状況や日程は、県や受託した会社の案内で、その時点の情報を確かめてください。
県の窓口と、それぞれに聞けること
DXやAIについて相談できる主な公的な窓口を、聞けることの違いで整理すると次のようになります。
茨城県内のDX・AIに関わる主な公的な窓口| 窓口 | どんな所か | 聞けること・使い方の例 |
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| 茨城県産業技術イノベーションセンター(ITIC) | 県の技術支援の機関。令和元年度から県内中小企業のデジタル技術の活用を支援 | 技術の相談、講座やワークショップ。令和6年度は生成AIを使うワークショップに26社33名が参加 |
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| 茨城県DX推進ラボ | 情報処理推進機構(IPA)の「地域DX推進ラボ」の1つ。県と県内の産業支援機関などで構成。窓口は県の産業戦略部 技術革新課 | 県内のDXの取り組みの情報、支援機関へのつなぎ |
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| 茨城県よろず支援拠点 | 国が47都道府県に設置した経営相談の窓口。運営は公益財団法人いばらき中小企業グローバル推進機構 | 経営全般の相談の中で、デジタル化やITの使い方も相談できる |
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| 県の事業の講座・報告会 | 年度ごとに県が行う事業。運営は委託を受けた会社が担うことが多い | AIの基礎の講座、県の取り組みの報告会 |
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茨城県よろず支援拠点は、2024年の県の「支援施策ガイドブック」によると、水戸市桜川の茨城県産業会館9階にあります。窓口ごとの受付の方法や日程は、それぞれの案内で確かめてください。
どの窓口も、自社に代わって道具を作ってくれる所ではありません。方向を確かめる、基礎を学ぶ、ほかの機関や専門家につないでもらう、といった使い方が中心です。この役割を知ったうえで使うと、「行ったけれど何も決まらなかった」ということが減ります。
窓口を選ぶ目安
- ものづくりの技術と合わせてデジタル化を考えたい → 産業技術イノベーションセンター
- 県内でどんな支援があるのか全体を知りたい → 茨城県DX推進ラボ
- 売上や人手など、経営の悩みの中でITの使い方も相談したい → よろず支援拠点
- 社員にAIの基礎を学ばせたい → 県の事業の講座
講座・ワークショップ・報告会の使い方
公的な窓口の講座やワークショップは、AIの全体像や、ほかの会社の取り組みを知るのに向いています。一方で、出ただけで終わってしまい、自社の仕事が何も変わらなかった、という声もよく聞きます。持ち帰れるものを増やすには、出る前と後の準備が大事です。特にワークショップのように手を動かす場では、自社の書類を持っていくかどうかで、得られるものが大きく変わります。配られた練習の題材だけで終わると、会社に戻ってから自社の書類に置きかえる段階で手が止まりやすいためです。
- 出る前に、自社で試したい仕事を1つ決めておく(「見積書づくり」「日報のまとめ」など)
- その仕事で使っている書類を1枚、名前や金額を伏せた形で用意する
- 講座の中で出てきた使い方のうち、その書類に使えそうなものをメモする
- 質問の時間があれば、用意した書類の話をして、使えそうかを聞く
- 会社に戻ったら1週間以内に、メモした使い方を、その書類で1回試す
- 試した結果(うまくいった所・いかなかった所)を、社内で一言共有する
例:見積作成の報告会に出る前後
例として、見積書づくりに時間がかかっている会社が、県の事業の報告会に出るとします。出る前に、過去の見積書を1通、取引先名と金額を伏せた形で用意し、「品目と数量から見積書を作るのに、いま何分かかっているか」を測っておきます。報告会では、AIで見積書のどの部分が短くなったかに注目してメモし、会社に戻ってから、用意した見積書で同じ使い方を試します。こうすると、報告会の話が自社の数字と比べられる形で残ります(会社と中身は説明のための例です)。
動画で学ぶ講座を続けるこつ
県の人材育成の講座のように、動画と小テストで自分のペースで学ぶ講座は、いつでも受けられる反面、忙しくなると止まりがちです。受ける期間が長い講座ほど、途中で止まる人が出やすくなります。受ける人の予定に「毎週この曜日の朝30分」と学ぶ時間を先に入れておく、2人以上で受けて週に1回進み具合を話す、といった工夫で続けやすくなります。学んだ使い方を、その週のうちに自分の仕事で1回使ってみることも、身につけるうえで効果があります。
窓口に行く前に用意すること
公的な窓口の相談は、時間に限りがあることが多いものです。限られた時間で中身のある話をするには、事前の準備が効きます。次の4つを、紙1枚にまとめておきます。
窓口に行く前に、紙1枚にまとめておくこと| 項目 | 書き方の例 | なぜ要るか |
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| 会社のあらまし | 業種、社員の数、主な取引先の種類 | 相談員が、似た会社の例を思い浮かべやすくなる |
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| 困っている仕事 | 「受注の打ち込みに事務の2人が毎日2時間」 | 話の的が絞れる |
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| 使っている書類と道具 | 紙の注文書、Excelの受注表、会計ソフト | どこにデジタルの道具が使えるかを考える材料になる |
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| 聞きたいこと | 「AIで注文書を読めるか」「どこに相談すればよいか」 | 相談の終わりに、答えをもらい損ねない |
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AIについて相談するときは、AIに入れたくない情報(取引先の名前、金額、個人の情報など)があるかも書いておくと、どこまで試せるかの話が早くなります。
相談のあとは、聞いた内容と、次にやることを1行ずつ書いて残しておきます。公的な窓口から、ほかの機関や専門家を紹介されることもあるので、誰に何をつないでもらったかもメモしておくと、話が途切れません。窓口が複数にまたがるときは、どこで何を聞いたかを1枚にまとめておくと、同じ説明をくり返さずに済みます。
いばらきAIにご相談いただいたら
公的な窓口で方向が見えたら、次は自社の書類で実際に試し、毎日使える形にする段階です。いばらきAIのAX推進顧問は、月2回の定例で社内の仕事をうかがい、AIに任せる仕事と取り組む順番を決めていきます(最低3か月)。定例では、窓口で聞いた話や講座で知った使い方を、御社の書類に当てはめて試します。
窓口に行く前にまとめた紙1枚は、そのまま初回のご相談(無料・オンライン・30分〜)の材料になります。お申し込みはメールでお受けしています。公的な窓口の講座や報告会と並べて使っていただいて構いません。講座で学んだことを社内で続けたい場合は、AIの使い方を全6回で身につけるAI研修もあります。
AX推進顧問について見る
茨城県の会社のAI導入について見る
まとめ:窓口に持っていく紙1枚を作る
- 県は令和8年度、生成AIなどで県内中小企業の生産性向上を後押しする事業を始めた
- ITIC・DX推進ラボ・よろず支援拠点・県の事業の講座は、聞けることが違う
- 講座は試したい仕事を1つ決めてから出て、1週間以内に自社の書類で試す
まずは、会社のあらまし・困っている仕事・使っている書類と道具・聞きたいことの4つを、紙1枚に書いてみてください。どの窓口に行くときも、その1枚があれば、限られた時間で自社の話ができます。
書いた1枚は、窓口に行ったあとも捨てずに取っておきます。相談で聞いたことや、つないでもらった先を書き足していくと、自社のDXの記録になり、次の相談や社内の説明にもそのまま使えます。