
梅の見ごろ、花火大会の日の駐車場、冬季の営業時間の変更。観光施設や宿では、季節ごとにお知らせを出す場面がたくさんあります。ホームページ、館内の掲示、SNS、取引先へのメールと、出す先ごとに書き直すうちに、担当の方の一日が終わってしまうこともあります。
お知らせの文章は、AIが得意とする仕事の1つです。ただ、日付や料金のように間違えられない情報が多く、そのまま出すと思わぬ誤りが紛れ込みます。
この記事では、県内の観光でAIがどう使われ始めているかを紹介したうえで、お知らせ文のどこに手間がかかっているか、AIで下書きして人が確かめる手順、1つの案内を3つの長さに書き分ける例を紹介します。
県内の観光でも、AIが使われ始めた
水戸市は、令和8年7月21日に、ブリッジウェルと「自治体業務のDX推進に関する連携協定」を結びました。同社の発表によると、その場所に合わせて案内をするAI「ToyTalk」は、2026年の「水戸の梅まつり」で初めて観光案内に使われ、その後「水戸のあじさいまつり」「第66回水戸黄門まつり」でも使われました。
県を代表する祭りで、訪れた人への案内にAIが使われたことは、観光の現場にとって身近な例です。
県内の企業全体で見ても、文章の仕事にAIを使う動きは広がっています。帝国データバンク水戸支店の調査(2026年3月)では、生成AIを業務で「活用している」サービス業の企業は34.8%で、県内全体の27.9%を上回りました。生成AIの使い道では、「文章の作成・要約・校正」が46.3%で最も多くなっています。
小さな施設や宿がお知らせ文でAIを使うときも、出来を決めるのは、AIに渡す中身の正しさです。日程や時間、料金が正しくそろっていなければ、どれだけ読みやすい文になっても、お知らせとしては役に立ちません。
大がかりな案内の仕組みでなくても、毎日のお知らせ文を作る作業は、小さな施設や宿でもすぐにAIを試せる分野です。
お知らせ文で手間がかかるところ
お知らせ文の作成を、担当の方の手元の作業に分けると、手間のかかる所は次の4つに集まります。
観光施設・宿のお知らせ文で手間がかかる所| 作業 | いまの手作業の例 | 困りごとの例 |
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| 中身をそろえる | 営業時間、料金、駐車場、混み具合の情報を、関係する人に聞いて回る | 最新の情報がどれか分からない |
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| 書き分ける | 同じ中身を、ホームページ・掲示・SNS・取引先向けに書き直す | 出す先ごとに一から書くので時間がかかる |
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| 読みやすくする | 長い文を短くし、大事なことを先に書く | 書く人によって読みやすさが違う |
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| 確かめる | 日付・曜日・料金・時間を、元の情報と見比べる | 書き直すたびに間違いが入り込む |
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このうち、AIに任せやすいのは「書き分ける」と「読みやすくする」の2つです。「中身をそろえる」と「確かめる」は、施設を知っている人の仕事として残ります。
特に気をつけたいのが、書き直しのたびに入り込む間違いです。ホームページでは「午前9時から」、SNSでは「9時半から」と、同じお知らせの中で食い違いが起きることがあります。元の中身を1つに決め、そこから書き分ける形にすると、食い違いが起きにくくなります。
1年分のお知らせを一覧にしておく
観光施設や宿のお知らせは、毎年ほぼ同じ時期に、ほぼ同じ中身で出ていることが多いものです。年末年始の営業、春の花の見ごろ、夏の行事、秋の紅葉、冬季の営業時間。去年のお知らせを探して書き直す作業も、毎年くり返されています。
- 去年1年分のお知らせを集め、出した月・中身・出した先を一覧にする
- 毎年出すものに印を付け、今年変わる所(日付・時間・料金)だけを空欄にした箇条書きの型を作る
- 出す1か月前に、空欄を埋めた箇条書きをAIに渡して下書きを作る
一覧を作る作業も、AIに手伝ってもらえます。去年のお知らせの文をまとめて渡し、「出した月・何のお知らせか・日付・時間」を表に抜き出すよう頼めば、たたき台ができます。抜き出した表は、元の文と見比べて確かめます。
AIで下書きし、人が確かめる手順
お知らせ文をAIで作るときは、次の順で進めます。いきなり「お知らせを書いて」と頼むより、伝える中身を先に決めて渡すほうが、間違いの少ない下書きになります。
- 伝える中身を、箇条書きで決める(何のお知らせか、いつからいつまで、時間、料金、場所、問い合わせ先)
- 読む人を決める(初めて来る人か、常連の人か、取引先か)
- AIに箇条書きを渡し、「この中身だけを使って」「書いていないことは足さないで」と伝えて下書きを頼む
- 出す先ごとの長さと形を指定して、書き分けてもらう(SNSは短く、掲示は大きな字で読める量、ホームページはくわしく)
- 下書きの日付・曜日・時間・料金を、1つ目の箇条書きと1つずつ見比べる
- 施設の言葉づかいに合っているかを読み、直してから出す
3つ目の「書いていないことは足さないで」は、大事な一言です。AIは、それらしい言葉を足して文を整えようとします。「お子さま連れにも人気です」「地元の食材を使った」といった、事実か分からない言葉が紛れ込むことがあります。渡した中身以外は書かないように頼み、それでも足された言葉は、確かめる段階で消します。
5つ目の見比べは、人が受け持つ一番大事な仕事です。AIは日付と曜日の組み合わせを間違えることがあります。カレンダーを横に置いて、1つずつ確かめてください。
よく聞かれることを、先にお知らせに入れる
お知らせを出したあとに、同じ問い合わせの電話が何本も来ることがあります。「駐車場はありますか」「雨の場合はどうなりますか」「子どもも参加できますか」。こうした問いは、お知らせの中で先に答えておけば減らせます。
下書きを作ったら、AIに「この案内を読んだ人が、ほかに聞きそうなことを5つ挙げて」と頼んでみてください。挙がった問いのうち、答えが決まっているものを箇条書きに足して、もう一度下書きを作ります。電話で実際に多かった問いを担当の方がメモしておくと、次の年のお知らせにも使えます。答えの決まっていない問いは、AIに答えを作らせず、担当の方が施設の中で確かめてから足します。
施設の言葉づかいをAIに覚えてもらう
過去に出したお知らせのうち、出来の良かったものを3つほど選び、「この書きぶりに合わせて」と一緒に渡すと、施設らしい言葉づかいの下書きが出やすくなります。「です・ます」で書く、絵文字は使わない、地名は正式な呼び方で書く、といった決まりも、短い一覧にして毎回渡します。
例:祭りの案内文を3つの長さで
例:県北の温泉宿が、地元の夏祭りに合わせて出すお知らせ
宿から歩いて行ける距離で、地元の夏祭りが開かれます。宿では、祭りの日の夕食の時間を早め、浴衣の貸し出しを行います。伝える中身は、祭りの日付、夕食の時間の変更、浴衣の貸し出しの時間と数、当日の駐車場の混み具合の4つです(宿・祭り・中身はすべて説明のための例です)。
この4つを箇条書きでAIに渡し、出す先ごとに長さと形を指定して書き分けてもらいます。
1つの中身から書き分ける3つの長さ(例)| 出す先 | 長さと形 | 入れる中身 | 人が確かめる所 |
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| SNS | 2〜3行。最初の1行で何のお知らせかが分かる | 祭りの日付と、浴衣の貸し出しがあること | 日付と曜日、施設のアカウントの言葉づかい |
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| 館内の掲示 | 大きな字で読める量。箇条書き4行ほど | 夕食の時間の変更、浴衣の貸し出しの時間と数 | 時間、数、掲示の場所に合った書き方 |
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| ホームページ | 見出しと本文。問い合わせ先まで | 4つの中身すべてと、駐車場の混み具合の目安 | 全部の数字、問い合わせ先、ほかのページとの食い違い |
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一から3つを書くと、それぞれに言い回しを考える時間がかかります。中身を1つに決めてAIに書き分けてもらえば、担当の方の仕事は、箇条書きを作ることと、3つの下書きを確かめることになります。祭りの日付が変わったときも、箇条書きの1行を直して書き分け直せば、3つの文が同時にそろいます。
外国から来るお客さまが多い施設なら、同じ箇条書きから英語のお知らせの下書きを作ることもできます。その場合も、日付や時間の書き方が正しいかを確かめ、可能であれば英語の分かる人に一度読んでもらいます。
いばらきAIにご相談いただいたら
お知らせ文は、担当の方が自分でAIを使えるようになると、毎回の手間がいちばん減る仕事です。いばらきAIのAI研修では、少人数(1〜5名)で全6回、AIの使い方を回ごとに1つずつ身につけます。1回2時間をオンラインで、約2か月かけて進めます。
回ごとの演習では、メールの返事や議事録といった、ふだんの事務を使います。頼み方や、文章を作る・直す使い方を練習するので、この記事で紹介した箇条書きからの書き分けや、日付の見比べも、ご自身で回せるようになります。
まずは過去のお知らせを1つ添えて、メールでご相談ください。初回のご相談(無料・オンライン・30分〜)で、そのお知らせを3つの長さに書き分けた例をお見せします。
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まとめ:次のお知らせの中身を、箇条書きで書く
- 県内の観光でも、祭りの案内などでAIが使われ始めている
- AIに任せるのは書き分けと読みやすさ。中身をそろえることと確かめることは人が受け持つ
- 中身を1つの箇条書きに決めてから書き分けると、食い違いが起きにくい
次に出すお知らせの中身を、まず箇条書きで書いてみてください。その箇条書きをAIに渡して3つの長さに書き分けてもらい、日付と時間を見比べるところまでやってみると、どこまで任せられるかの手応えがつかめます。
1回うまくいったら、そのときの箇条書きと頼み方、確かめた所をメモに残しておきます。次のお知らせからは、そのメモを見ながら同じ手順で進めれば、担当が替わっても同じ品質で出せるようになります。