
お客さまから「ブレーキから音がする」と電話が入る。車を見て、必要な部品と作業を書き出し、部品の値段を調べて、見積書に手で写す。作業が終わったら、整備の内容を伝票に書き、別の台帳にも書き写す。次にその車が来たとき、前回なにを替えたかを、紙の束やパソコンのファイルから探す。整備工場やタイヤ販売店では、整備そのものの前後に、こうした書き写しと探し物がたくさんあります。
見積もりも整備記録も、中身は「部品」「作業」「車」の組み合わせです。決まった組み合わせを表にそろえておけば、見積もりの下書きや記録の整理は、AIや小さな道具が手伝いやすい仕事になります。
この記事では、見積もりと記録でたまる書き写しを整理し、部品と作業の一覧から見積もりを作る手順、整備記録を探せる形にする方法を、車ごとの履歴を1画面にする例で説明します。
見積もりと記録でたまる書き写し
中小企業基盤整備機構が全国の中小企業に聞いた調査では、AIなどで効率化するのが難しい業務として、営業提案や顧客折衝のような「人の判断が必要な業務」を挙げた会社が7割近くにのぼりました。整備の仕事でも、車の状態を見て何を替えるかを決めるのは、整備士の判断です。
一方で、その判断の前後には、判断のいらない書き写しが多くあります。
整備の前後にある書き写しと探し物| 場面 | していること | 手間になる所 |
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| 見積もり | 部品と作業を書き出し、値段を調べて見積書に写す | 部品の値段を毎回調べ、手で計算する |
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| 作業の指示 | 見積もりの内容を、作業の伝票に書き直す | 見積もりと伝票で同じことを書く |
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| 整備の記録 | 伝票の内容を、台帳やパソコンに書き写す | 書き写しが夕方にたまる |
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| 次の来店 | 前回の整備の内容を、紙やファイルから探す | どこに書いたか分からない |
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| お客さまへの説明 | 前回の内容と今回の見積もりを、口で説明する | 前回の内容がすぐに出てこない |
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どれも、同じ部品・作業・車の情報を、形を変えて何度も書いている所です。最初に1回書いた情報を、あとの場面で使い回せるようにすれば、書き写しの多くは減らせます。
部品と作業の一覧から見積もりを作る
見積もりの書き写しを減らすには、まず、よく使う部品と作業の一覧を1つの表にそろえます。表がそろえば、品目を選ぶだけで見積書の下書きができる形にできます。
- 過去3か月ほどの見積書を集め、よく出てくる部品と作業を書き出す
- 部品の表を作る(部品の名前・品番・どの車に使えるか・値段・値段を調べた日)
- 作業の表を作る(作業の名前・かかる時間の目安・工賃)
- よくある組み合わせを「セット」として決める(例:ブレーキの部品の交換と、それに伴う作業)
- 見積もりのときは、セットや品目を選び、数量を入れて下書きを作る
- 整備士が車の状態に合わせて品目を足し引きし、値段と合計を確かめてからお客さまに出す
AIが手伝えるのは、1つ目と4つ目の手順です。過去の見積書をAIに読ませて、よく出てくる部品と作業を一覧に書き出させたり、いつも一緒に出てくる組み合わせを挙げさせたりできます。手書きの見積書でも、写真にすれば読み取れます。
値段は表で持ち、AIに計算させない
部品の値段や工賃は、表に入れた数字をそのまま使い、合計は表計算や道具の計算で出します。AIに値段を調べさせたり、合計を計算させたりすると、もっともらしい間違いが入ることがあります。値段を調べた日を表に残し、古くなった値段を見直す決まりも作っておきます。
お客さまの言葉からセットの候補を挙げる、という使い方もあります。たとえば「ブレーキから音がする」というメモから、AIに考えられる点検の項目とセットの候補を挙げさせ、整備士が車を見て選ぶ形です。候補を挙げるのはAI、決めるのは整備士、という分け方をはっきりさせておきます。
一覧ができると、見積もりを作れる人も増えます。これまで店長しか作れなかった見積もりを、受付の方が一覧から下書きし、整備士が確かめる、という分担もできるようになります。
整備記録を探せる形にする
整備記録を次の来店で生かすには、車の番号(登録番号や車台番号など、店で決めた番号)で引ける1つの表にまとめます。
整備記録の表にそろえる列(例)| 列 | 中身 |
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| 車の番号 | 店で決めた番号。お客さまの名前とは別の表で結びつける |
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| 日付 | 作業をした日 |
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| 走った距離 | 作業のときのメーターの数字 |
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| した作業 | 作業の表の名前で書く(自由に書かない) |
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| 替えた部品 | 部品の表の名前と品番で書く |
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| 気づいたこと | 次に見ておきたい所(例:前のタイヤの溝が少なめ) |
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| 担当 | 作業をした整備士 |
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大事なのは、「した作業」と「替えた部品」を、見積もりで使った一覧の名前で書くことです。人によって書き方がばらばらだと、あとで探せません。見積もりの下書きから作業の記録を作る形にすれば、書き写しも減り、名前もそろいます。
お客さまの情報は別の表に分ける
整備記録の表には、お客さまの名前や電話番号を入れず、車の番号だけで持つのがおすすめです。名前や連絡先は別の表に置き、車の番号で結びつけます。こうしておくと、AIに整備記録を読ませて傾向を見るときも、お客さまの個人の情報を渡さずに済みます。
紙の記録が残っている場合
これまでの記録が紙の台帳や伝票にしか無い場合は、よく来るお客さまの車から順に、写真に撮ってAIで表に書き出します。車の番号と日付、距離の数字は読み違えやすいので、人が元の紙と見比べます。全部を一度に移す必要はなく、来店のたびに1台ずつ移していく方法もあります。
例:車ごとの履歴を1画面に
ここでは、県内で車検と一般整備、タイヤの販売と取り付けをする、従業員12人ほどの整備工場を例に考えます(例として作った会社です)。見積書は手書き、整備の記録は伝票の控えを車ごとのファイルに綴じていました。
部品と作業の一覧を作り、見積もりの下書きから作業の記録を作る形にしたうえで、車の番号を入れると、その車の履歴が1画面に並ぶ小さな道具を作りました。
例の整備工場で、車の番号を入れたときに出る画面| 画面に出るもの | 使う場面 |
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| これまでの作業と替えた部品の一覧(新しい順) | 前回なにを替えたかを、受付で答える |
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| 前回の「気づいたこと」 | 今回の点検で、先に見ておく所を決める |
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| 走った距離の移り変わり | 次に替える時期の目安を、お客さまに説明する |
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| 今回の見積もりの下書き | 前回の内容と並べて、お客さまに説明する |
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受付で前回の内容を聞かれたとき、ファイルを探さずに答えられるようになりました。前回の「気づいたこと」が画面に出るので、点検で見落としにくくなった、という効き目もありました(例としての話です)。
例の画面の中身は、考え方を示すためのものです。どの情報を並べるかは、店の仕事の流れや、お客さまへの説明の仕方によって変わります。
いばらきAIにご相談いただいたら
いばらきAIの無料相談は、オンラインで30分〜です。メールで、会社名と、見積もりや記録で困っていることを一言お送りください。お客さまの名前を消した見積書や伝票の見本があれば、ご相談の場で、AIで部品と作業を書き出す様子をお見せできます。
業務ツールの開発では、話を聞いたエンジニアがそのまま作ります。部品と作業の一覧から見積もりの下書きを作り、そのまま車ごとの記録に残る道具を、店の仕事の流れに合わせ、試作を整備士の方に触っていただきながら形にします。アカウントは御社の名義で作り、説明のスライドと説明の動画もお渡しします。
業務ツールの開発について見る
自動車・タイヤ販売のAI活用を見る
まとめ:過去3か月の見積書を集める
- 見積もりと記録の手間は、同じ情報を何度も書き写していることから生まれる
- 部品と作業の一覧をそろえ、値段は表で持ち、AIには計算させない
- 整備記録は車の番号で引ける1つの表にし、見積もりと同じ名前で書く
まずは、過去3か月ほどの見積書を集めて並べてみてください。よく出てくる部品と作業が見えれば、それが一覧の最初の行になります。最初から全部の部品をそろえる必要はありません。よく出てくる品目から一覧にし、見積もりのたびに足りない品目を書き足していけば、一覧は少しずつ育っていきます。