
取引先から注文のメールが届くと、事務の方がそれを読みながら受注の一覧表に打ち込みます。夕方には、その一覧表から出荷の指示書へ同じ品名と数量を写し、月末には請求のための表へもう一度写します。1件の注文を、3回書き写している計算です。
書き写しは、1回ごとの手間は小さくても、回数が多いぶんミスも起きます。数量の桁がずれる、似た品名を取り違える、1行飛ばす。見つけるのは、たいてい取引先からの問い合わせが来てからです。
この記事では、社内のどこで転記が生まれているかを書き出す方法と、なくせる転記・残す転記の分け方、AIに写す作業を任せる手順を、注文メールの例で説明します。
転記が生まれる場所を書き出す
転記は、ふだんは仕事の一部に溶けこんでいて、どれだけあるかが見えません。まずは1つの仕事の流れに沿って、情報がどこから入り、どこへ写されていくかを紙に書き出します。
書き出すときは「写す元」と「写す先」を矢印でつなぎ、矢印1本ごとに、だれが・いつ・どのくらいの回数で写しているかを書き添えます。担当の方に聞くと「そういえば、ここでも写していた」という所が、たいてい1つ2つ出てきます。
転記の書き出し表(例:注文を受けてから請求まで)| 写す元 | 写す先 | だれが・いつ | 回数の目安 | よく起きるミス |
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| 注文のメール | 受注の一覧表(Excel) | 事務・受けたとき | 1日に十数件 | 数量の桁、似た品名 |
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| 受注の一覧表 | 出荷の指示書 | 事務・夕方 | 1日に1回まとめて | 1行飛ばし |
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| 出荷の指示書(手書きの済み印) | 受注の一覧表の「出荷済み」欄 | 倉庫・翌朝 | 1日に1回 | 印の付け忘れ |
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| 受注の一覧表 | 請求のための表 | 経理・月末 | 月に1回 | 取引先名のゆれ |
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この表は一つの例です。書き出してみると、1つの情報が何回写されているか、どこでミスが起きやすいかが、ひと目で分かるようになります。社長や責任者が見ても、どこに手を打てばよいかの話がしやすくなります。
中小企業基盤整備機構の調査では、AIを「既に導入している」と答えた中小企業は20.4%、「まだ導入していない」は79.6%でした。まだ使っていない会社が多いからこそ、いきなり道具を探すより、この書き出しから始めるほうが、自社に合う使い方を見つけやすくなります。
なくせる転記・残す転記
書き出した矢印を、次の3つに分けます。全部をAIに任せる必要はありません。仕組みを少し変えるだけで消える転記もあります。
1.仕組みを変えればなくせる転記
同じ中身を、形だけ変えて別の表に写しているものです。例の「受注の一覧表から出荷の指示書へ」は、一覧表の中に出荷用の列を足して、そのまま印刷すれば写す必要がなくなります。表を分けた理由が「昔からそうしていた」だけなら、まとめられないかを先に考えます。
2.AIに任せられる転記
文章や紙のように、形の決まっていないものから、決まった欄へ写しているものです。注文のメールは、取引先ごとに書き方が違います。「いつもの」「先週と同じ」のような書き方もあります。人が読んで欄に入れていた所を、AIに読ませて欄に入れさせます。
3.確かめのために残す転記
写す作業そのものが、中身を確かめる役目をしているものです。たとえば、出荷の前に倉庫の方が指示書を見ながら品物をそろえ、そろえた数を書き込む作業は、写しているようで実は数えています。ここは無理に消さず、手間を軽くする方法を考えます。
迷ったら「写しながら何を見ているか」を聞く
担当の方に「写しているとき、何か気をつけて見ていますか」と聞いてみてください。「ついでに金額がおかしくないか見ている」という答えが返ってきたら、その転記は確かめの役目を持っています。AIに任せる場合も、その確かめの所だけは人に残します。
AIで写す作業を置きかえる手順
2つ目の「AIに任せられる転記」を1つ選んだら、次の順で試します。最初は1種類の書類、1人の担当の方の仕事に絞ります。
- 写す先の表の列を確かめ、AIに埋めてほしい欄を決める(例:取引先・品名・数量・希望の納期)
- 過去の注文メールを10通ほど集め、書き方の違うものを混ぜておく
- AIに「次のメールから、取引先・品名・数量・希望の納期を、表の1行の形で書き出して」と頼み、10通分を試す
- 人が写した過去の一覧表と見比べ、合わなかった行と、その理由を書き留める
- 理由ごとに、頼み方の文を直す(「品名は、品名の一覧にある書き方にそろえて」など)
- 10通がおおむね合うようになったら、毎日の注文で使い始め、人は合わなかった所だけを直す
5番の「品名の一覧にそろえる」は効き目が大きい工夫です。取引先は品名を略したり、古い呼び方をしたりします。正しい品名の一覧をAIに一緒に渡しておくと、写すたびに書き方がばらつくのを防げます。
使い始めて1か月たったら見直すこと
1か月使うと、AIが合わなかった行の理由がたまってきます。理由を並べてみると、「新しい取引先の書き方」「季節の品物の名前」のように、いくつかの種類にまとまるはずです。種類ごとに頼み方の文や品名の一覧を直すと、人が直す行がさらに減ります。
反対に、何度直しても合わない種類が残ることもあります。たとえば、電話で受けた注文を担当の方が走り書きしたメモは、書く人によって省き方が違い、AIでも読み切れないことがあります。そうしたものは無理に任せず、写す元の書き方をそろえる(メモの欄を決める)ほうが早く片づきます。
AIは、読み取りを間違えることがあります。とくに、メールの本文に数字が多いときや、追加と取り消しが同じメールに書かれているときは要注意です。そうしたメールは、AIの結果に「人が見る」の印を付けさせ、担当の方が元のメールを開いて確かめます。
例:注文メールから一覧表へ
架空の取引先からのメールを例に、AIがどう写すかを見てみます。
例:届いた注文のメール
いつもお世話になっております。来週の水曜までに、いつものA型の部品を20個、それと先月お願いしたB型のカバーを、今回は5箱お願いします。先週のC型は、追加はなしで大丈夫です。
例:AIが書き出した一覧表の行(品名は品名の一覧にそろえたもの)| 取引先 | 品名 | 数量 | 希望の納期 | 人が見る |
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| 例:〇〇製作所 | 部品A型 | 20個 | 来週水曜 | |
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| 例:〇〇製作所 | カバーB型 | 5箱 | 来週水曜 | 「今回は」とあり、いつもと数が違う |
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| 例:〇〇製作所 | 部品C型 | 0 | | 追加なしの意味かを確かめる |
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1行目はそのまま使えます。2行目と3行目には、AIが「人が見る」理由を書いています。担当の方は、この2行だけ元のメールを読み返せば済みます。全部の行を見直していたときと比べて、見る量が減ります。
3行目のように、注文でない内容まで行にしてしまうことがあります。頼み方の文に「注文の無い品物は行にしない」と書き足すと、次からは出なくなります。こうした直しを数回くり返すと、その会社の注文メールに合った頼み方ができあがります。
いばらきAIにご相談いただいたら
初回のご相談(無料・30分〜)はオンラインで行います。どこで何回写しているかを一緒に書き出し、なくせる転記・AIに任せる転記・残す転記に分けます。注文のメールや一覧表をお借りできれば、その場でAIに写させてお見せします。
毎日の転記を、メールが届いたら一覧表に行が増える形にしたいときは、業務ツールの開発としてお受けします。お話をうかがったエンジニアがそのまま作り、試作を触っていただきながら直します。道具と一緒に、説明のスライドと説明の動画もお渡しします。アカウントは御社の名義で作ります。
どの仕事から手をつけるか決めかねているときは、AX推進顧問(月2回の定例・最低3か月)で、AIを使える仕事の一覧と取り組む順番を決めるところから始められます。
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まとめ:1つの仕事の転記を、矢印で書き出す
- 「写す元・写す先・だれが・回数」を1枚の表にすると、転記の多さが見える
- 表をまとめれば消える転記は、AIより先に仕組みで消す
- 形の決まっていない文章や紙からの転記は、AIに読ませて欄に入れさせる
- 写しながら確かめている所は、人に残す
まずは、いちばん件数の多い仕事を1つ選び、情報がどこへ写されていくかを矢印で書いてみてください。矢印の数が、見直しの手がかりになります。