
日中は利用者さんのそばで、食事や水分の量、排せつ、様子をメモ用紙や記録用紙に書きとめる。夕方、職員の方が事務所のパソコンに向かい、そのメモを見ながら記録のシステムに打ち直す。介護の現場では、この「二度書き」に毎日かなりの時間がかかっています。
手書きのメモは、利用者さんのそばで手早く書けるという良さがあります。それを無理にタブレットの入力に変えるより、書いたメモをAIで読み取り、システムに入れる形の一覧にする方法なら、現場の書き方を変えずに二度書きを減らせます。
この記事では、介護の記録が二度書きになる理由を整理し、手書きの記録をAIで読み取る手順、利用者さんの情報の扱い方を、1日の記録の例で説明します。
介護の記録が二度書きになる理由
介護の記録の二度書きは、職員の方の書き方の問題ではありません。利用者さんのそばで書く場面と、記録として残す場面で、求められるものが違うことから生まれます。
そばで書くメモと、残す記録の違い| 比べる所 | そばで書くメモ | 残す記録 |
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| 書く場所 | 居室、食堂、浴室の前など | 事務所のパソコンや記録のシステム |
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| 書き方 | 短い言葉、数字だけ、略した書き方 | 決まった項目と、だれが読んでも分かる文 |
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| 書く時間 | 介助の合間の数秒 | 勤務の終わりにまとめて |
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| 書く人 | その場にいた職員 | メモを集めた職員(ほかの人のメモも打つことがある) |
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4つ目の行がとくに手間を増やします。ほかの職員の方のメモを打ち直すときは、読みにくい字や略し方を、書いた本人に聞き直すことになります。勤務が替わっていれば、翌日まで分からないこともあります。
打ち直しが勤務の終わりに集まると、記録のために残る時間も増えます。記録の時間が短くなれば、そのぶんを利用者さんと話す時間や、職員の方の休む時間に回せます。
どの記録を、どの項目で、どれだけの期間残すかは、介護の制度の決まりや、自治体・事業所の決まりで決まっています。この記事で扱うのは、その決まりに沿った記録を作るまでの、書き直しの手間を減らす方法です。
手書きの記録をAIで読み取る手順
手書きのメモを一覧にする手順は、次のとおりです。最初は、利用者さんの名前を消した見本のメモで、読み取りの出来を試すところから始めます。
- 記録のシステムに入れる項目を書き出す(時刻・利用者さん・食事の量・水分の量・排せつ・様子・対応した職員など)
- メモ用紙に、項目の欄を印刷しておく。書く順番を項目の並びにそろえる
- 利用者さんの名前は、メモには事業所で決めた番号や部屋の番号で書く決まりにする
- 勤務の終わりに、その日のメモをスマホやスキャナで読み取る
- AIに、決めた項目の表の形に書き出させる。読めない字は推し量らずに「読めない」と印を付けさせる
- 書いた職員の方が、自分の分の表を元のメモと見比べ、印の付いた所を直す
- 確かめた表をもとに、職員の方が記録のシステムに入れる
6つ目の手順で、書いた本人が確かめるのが大事です。字の読み違いや、略した言葉の意味は、書いた人がいちばんよく分かります。打ち直しにかかっていた時間が、見比べの時間に変わります。
略し方を事業所でそろえる
そばで書くメモには、略した言葉がたくさん出てきます。略し方が職員ごとに違うと、AIも人も読み違えます。よく使う略し方を一覧にして、事業所でそろえておきます。
- 食事の量:「全」「半」「1/3」のように、書き方を3〜4通りに決める
- 水分の量:数字だけを書き、単位は欄に印刷しておく
- 様子:「穏やか」「眠そう」のように、よく使う言葉を10個ほど見本として挙げておく
- いつもと違うこと:欄の頭に「!」を付ける決まりにして、AIにもその行を目立たせて書き出させる
略し方の一覧は、AIに読み取らせるときにも一緒に渡します。AIが「半」を「半分」と読み替えるといった並べ方を、一覧どおりにそろえられます。
名前を番号で書くと、扱いがぐっと楽になる
メモに利用者さんの名前ではなく番号を書く決まりにすると、AIに渡す情報から名前が外れます。番号と名前の対応表は事業所の中だけに置き、記録のシステムに入れるときに人が結びつけます。
利用者さんの情報の扱い
介護の記録には、利用者さんの体の状態や病気のこと、家族のことが書かれます。こうした健康の情報は、法律でとくに慎重な扱いが求められる情報(要配慮個人情報)にあたることがあります。
個人情報保護委員会は、2023年6月2日の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」で、個人情報を扱う事業者が生成AIに個人情報を含む指示を入れる場合は、利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確かめること、また、AIを提供する事業者がその個人データを機械学習に利用しないことなどを十分に確かめることを挙げています。
介護事業所でAIを使うときは、次のことを先に決めておきます。
AIを使う前に決めておくこと| 決めること | 決め方の例 |
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| AIに渡す情報 | メモの読み取りに要る項目だけ。名前は番号に置きかえる |
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| 渡さない情報 | 病名、家族の事情、連絡先など、読み取りに要らない情報 |
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| 使う道具 | 入れた内容が学習に使われない設定か、契約の中身で確かめたもの |
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| 使ってよい人 | 記録を受け持つ職員と、管理者 |
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| 読み取った表の置き場所 | 事業所の中の決まった場所。記録のシステムに入れたら消す |
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利用者さんやご家族への説明や同意が要るかどうかは、事業所の個人情報の扱いの決まりや、自治体の決まりに照らして、管理者の方が確かめてください。迷う場合は、AIに渡す情報から個人を特定できる情報を外す形にしておくと、判断がしやすくなります。
例:1日の記録を一覧に
ここでは、県内で利用者さん20名ほどのデイサービスを運営する事業所を例に考えます(例として作った事業所です)。職員の方は、介助の合間にメモ用紙へ書きとめ、夕方に2人が事務所で記録のシステムへ打ち直していました。
メモ用紙に項目の欄を印刷し、利用者さんを番号で書く決まりにしたうえで、夕方にメモをまとめて読み取り、AIで一覧にする形に変えました。
例の事業所で、1日の記録の流れの前と後| 場面 | 前 | 後 |
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| そばで書く | 白紙のメモに自由に書く | 項目の欄があるメモに書く(番号で) |
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| 夕方のまとめ | 2人がほかの人のメモも打ち直す | メモを読み取り、AIが項目の表に並べる |
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| 読めない字 | 書いた人に翌日聞き直す | 書いた人がその日のうちに自分の分を確かめる |
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| 記録のシステムへ | 打ち直しながら入れる | 確かめた表を見ながら入れる |
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この事業所では、最初の2週間は、AIの表と元のメモを全部見比べました。読み違いが多いのは、数字の「1」と「7」、略した言葉だと分かったため、メモの書き方の見本を作って職員の方に配っています(例としての話です)。
例の人数や流れは、考え方を示すためのものです。どこまでAIに任せられるかは、記録の項目や、使っている記録のシステムによって変わります。
いばらきAIにご相談いただいたら
いばらきAIの無料相談は、オンラインで30分〜です。メールで、事業所の名前と、記録で困っていることを一言お送りください。利用者さんの情報は送らないでください。項目の名前だけのメモ用紙の見本があれば、それで話は進められます。
業務ツールの開発では、話を聞いたエンジニアがそのまま作ります。メモを読み取って記録の項目の表にし、書いた職員の方が確かめられる道具を、事業所の記録の項目と、情報の線引きに合わせ、試作を見ていただきながら形にします。アカウントは事業所の名義で作ります。
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まとめ:メモ用紙に項目の欄を印刷する
- 二度書きは、そばで書くメモと残す記録の形の違いから生まれる
- 手書きのまま、AIで項目の表に並べれば、打ち直しが確かめに変わる
- 利用者さんの名前は番号に置きかえ、AIに渡す情報を絞る
まずは、今のメモ用紙に、記録のシステムと同じ並びの項目の欄を印刷してみてください。AIを使う前でも、打ち直しのときに迷う所が減ります。