
冷蔵庫の扉の横に下がった温度の記録表。朝と夕方に、担当の方が温度を書き込み、確かめた人がはんこを押す。1か月たつと記録表はファイルに綴じられ、棚にしまわれます。記録はきちんと残っているのに、見返されるのは監査や取引先の点検のときだけ、という工場も多いのではないでしょうか。
手書きの記録は、書く人にとっては手軽で確かな方法です。無理に画面の入力に変える必要はありません。書いたあとの記録をAIで読み取って一覧にすれば、手書きのまま、集計や見返しに生かせます。
この記事では、紙の記録がたまる仕事を整理し、記録表を写真からAIで読み取って一覧にする手順、いつもと違う値だけを知らせる考え方を、1か月分の温度記録の例で説明します。
紙の記録がたまる仕事
茨城県の統計では、県内の製造業の事業所(従業者4人以上)のうち、食料品は596事業所で12.3%と、金属製品に次いで多い業種です。県の農業産出額も全国第3位(令和6年)で、畑でとれたものを加工して出荷する会社も多くあります。
食品を扱う工場や作業場では、衛生と品質を守るために、毎日たくさんの記録をつけています。たとえば、次のような記録です。
食品の工場でよくある記録と、たまりやすい手間| 記録 | 書く回数の例 | たまりやすい手間 |
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| 冷蔵・冷凍庫の温度 | 1日2回など | 月末に表を綴じるだけで、傾向を見ていない |
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| 加熱の温度と時間 | ロットごと | 後から特定のロットを探すのに時間がかかる |
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| 清掃・消毒の記録 | 作業ごと | 抜けがあっても、気づくのが月末になる |
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| 手洗いや体調の確かめ | 毎朝 | 書いた人の名前が読みにくい |
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| 原料の受け入れの確かめ | 入荷ごと | 取引先からの問い合わせのたびに紙を探す |
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どの記録にも共通するのは、書くことは続いているのに、書いたあとの記録がほとんど使われていないことです。問題が起きたときや点検のときに、何冊ものファイルを手でめくって探すことになります。せっかく毎日続けている記録が、守りのためだけに使われているのはもったいないことです。
どの記録を、どの頻度で、どう残すかは、食品衛生の決まりや取引先との取り決め、自社の衛生管理の計画で決まります。この記事で扱うのは、その決まりに沿って書いた記録を、どう集計に生かすかです。
記録表を読み取って一覧にする手順
手書きの記録を一覧にする手順は、次のとおりです。ふだんの生成AIの画面で、記録表の写真を1枚渡して試すところから始められます。
- 記録表の形を見直し、日付・時刻・温度・書いた人・確かめた人の欄がはっきり分かれているかを確かめる
- 1日の終わりか週の終わりに、記録表をスマホで真上から撮る
- 写真をAIに渡し、決めた列(日付・時刻・場所・温度・書いた人・確かめた人・備考)の表に書き出させる
- 読み取れなかった文字や数字は、推し量らずに「読めない」と印を付けさせる
- 書き出した表を、表計算の一覧に1か月分ずつつなげていく
- 印の付いた所と、温度の数字は、担当の方が元の記録表と見比べて確かめる
1つ目の手順が、読み取りの出来を大きく左右します。欄の区切りがあいまいな表や、数字を書く欄が狭い表は、AIも読み違えやすくなります。記録表を作り直すときは、数字の欄を広めにとり、単位を表の上に印刷しておくと、書く人も読む側も楽になります。
読み取りやすい記録表にするコツ
記録表の作り方で、読み取りやすさが変わる所| 所 | 読み取りにくい表 | 読み取りやすい表 |
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| 数字の欄 | 狭く、ほかの欄とくっついている | 広めで、1つの欄に1つの数字 |
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| 単位 | 書く人が毎回書く | 表の上に印刷しておく |
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| マイナスの温度 | 「-」を書く人と書かない人がいる | 冷凍庫の表には、あらかじめ「−」を印刷しておく |
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| 名前の欄 | フルネームを手書き | 名字だけ、または決めた番号 |
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| 撮るとき | ファイルに綴じたまま斜めから | 外して平らな所に置き、真上から |
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表を作り直すのは、月の初めなどの区切りに合わせると混乱が少なくなります。書く人が変わる所は、朝礼などで一度見本を見せておきます。
元の記録表はそのまま残す
AIで作った一覧は、集計や見返しのための写しです。正式な記録は、書いた人と確かめた人の名前が入った元の記録表です。元の表を捨てたり、一覧で置きかえたりはしません。
いつもと違う値だけを知らせる
一覧ができると、記録を「書いて綴じる」だけでなく、「いつもと違う所を早く見つける」ことに使えるようになります。毎日すべての数字を人が見直すのではなく、気にすべき値だけを拾って知らせる形にします。
拾って知らせる値の例| 拾う値 | 決め方の例 | 知らせる相手 |
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| 決めた範囲を外れた温度 | 自社の衛生管理の計画で決めた範囲 | その日の責任者 |
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| 範囲の中でも、いつもより高い日が続く | 前の週の平均と比べて、決めた幅を超える日が3日続く | 設備の担当 |
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| 記入の抜け | 朝か夕方の欄が空いている | その日に書く担当 |
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| 確かめた人の欄が空いている | はんこやサインが無い | 確かめる担当 |
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2つ目の行が、一覧にしたからこそ見える変化です。範囲の中に収まっていても、冷蔵庫の温度がじわじわ上がっているなら、扉のパッキンの傷みや、設備の不調の前ぶれかもしれません。紙を1枚ずつ見ていると、こうした変化には気づきにくいものです。
知らせ方も決めておきます。範囲を外れた値のように、すぐ動くべきものはその日のうちに責任者へ。じわじわした変化や記入の抜けは、週に一度まとめて知らせる。急ぎの度合いで分けておくと、知らせが多すぎて見なくなる、ということを防げます。
範囲や幅をいくつにするかは、AIに決めさせません。自社の衛生管理の計画や設備の担当の方の経験から、人が決めます。AIは、決めた条件で拾う作業を手伝います。
例:1か月分の温度記録
ここでは、県内で干しいもや野菜の加工品を作る、従業員30人ほどの会社を例に考えます(例として作った会社です)。冷蔵庫と冷凍庫が合わせて6台あり、それぞれ朝と夕方に温度を手書きで記録しています。1か月で、記録の数は約360になります。
- 6台分の記録表を、週の終わりに担当の方がスマホで撮る
- AIで1枚ずつ表に書き出し、1か月分を1つの一覧にまとめる
- 一覧から、範囲を外れた値、記入の抜け、確かめた人の欄の空きを拾う
- 冷蔵庫ごとに、1か月の温度の動きを折れ線の図にする
- 月に一度、責任者と設備の担当が、拾われた所と図だけを見て話し合う
この会社では、図にしたことで、ある冷蔵庫だけ夕方の温度が少しずつ上がっていることに気づきました。範囲は外れていませんでしたが、点検してみると扉の閉まりが悪くなっていた、という具合です(例としての話です)。
例の会社で、一覧にする前と後| 場面 | 前 | 後 |
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| 記入の抜け | 月末に綴じるときに気づく | 週の終わりに気づき、その週のうちに確かめる |
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| 温度の動き | 見ていない | 冷蔵庫ごとの図で、月に一度見る |
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| 取引先からの問い合わせ | ファイルをめくって探す | 一覧で日付と冷蔵庫を絞り、元の記録表を出す |
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いばらきAIにご相談いただいたら
いばらきAIの無料相談は、オンラインで30分〜です。メールで、会社名と、記録で困っていることを一言お送りください。名前を伏せた記録表の写真があれば、ご相談の場で、AIで一覧に書き出す様子をお見せできます。
業務ツールの開発では、話を聞いたエンジニアがそのまま作ります。記録表の写真を送るだけで一覧に積み上がり、いつもと違う値を責任者に知らせる道具を、御社の記録表の形に合わせ、試作を見ていただきながら形にします。手書きの記録を続けたまま使える形にできます。
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まとめ:記録表を1枚、写真に撮ってみる
- 衛生・温度の記録は、書いたあとに見返されずに綴じられがち
- 写真からAIで読み取って一覧にすれば、手書きのまま集計に使える
- 範囲や幅は人が決め、AIには決めた条件で拾わせる
まずは、いちばん書く回数の多い記録表を1枚、スマホで真上から撮ってみてください。その1枚をAIで表にできるかを試すだけで、どこまで任せられそうかが見えてきます。読み違いが多ければ、記録表の作り方を見直すところから始めましょう。表の形を少し変えるだけで、書く人の手間を増やさずに読み取りやすくなることがよくあります。