
月が替わると、経理の机に封筒がいくつも届きます。中には、営業の方が1か月ためた領収書と、手書きの精算の紙。経理の担当の方は、日付・支払先・金額・使いみちを1枚ずつ精算表に打ち込み、社内の決まりに合っているかを確かめ、合わないものは本人に聞きに行きます。
領収書は、店ごとに形も文字の大きさも違います。感熱紙の文字が薄くなっていることもあります。打ち込みと確かめに時間がかかるのは、担当の方の手際のせいではなく、材料がそろっていないからです。
この記事では、経費精算で手間がかかる所を分けたうえで、領収書をAIで読み取って一覧にする手順と、決まりに合わないものだけを人が見る形を、1か月分の例で説明します。
経費精算で手間がかかる所
経費精算の手間を、作業ごとに分けてみます。どこにAIが使えて、どこは人が残るのかが見えてきます。
経費精算の作業と、AIに任せられる所| 作業 | いまのやり方(よくある形) | AIに任せられること | 人が残ること |
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| 打ち込む | 領収書を見ながら、日付・支払先・金額を表に打つ | 領収書の写真から、決まった欄に書き出す | 読み取りが怪しい所を、元の領収書で確かめる |
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| 使いみちを分ける | 交通費・会議費などに分ける | 支払先と品目から、分け方の候補を出す | 候補が合っているかを決める |
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| 決まりと照らす | 社内の決まり(上限や、事前の申請が要るもの)と見比べる | 決まりに当てはまりそうな行に印を付ける | 印の付いた行を見て、認めるかを決める |
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| 本人に聞く | 足りない情報を、口頭やメールで聞く | 聞くことの文面の下書き | 送るかどうか、言い方を決める |
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4つの作業のうち、時間をいちばん取るのは「打ち込む」です。ただ、間違えたときに困るのは「決まりと照らす」のほうです。AIを使うときも、この2つの重さの違いを分けて考えます。
中小企業基盤整備機構の調査では、AIをすでに導入している中小企業のうち、総務・管理部門でAIを導入していると答えた割合が68.3%で、部門の中でいちばん高い数字でした。経費の処理のような、決まった手順のくり返しが多い部門は、AIを入れる候補になりやすいと言えます。
領収書を読み取って一覧にする手順
最初は、社員の方全員に新しいやり方をお願いするのではなく、経理の担当の方が手元で試すところから始めます。
- 精算表の列を見直し、AIに埋めてほしい欄を決める(日付・支払先・金額・品目・支払いの方法など)
- 届いた領収書を、1枚ずつスマートフォンで撮る(明るい所で、まっすぐ上から)
- 写真をまとめてAIに渡し、「1枚を1行にして、決めた欄の順に書き出して」と頼む
- 書き出した一覧を、精算表に貼りつける
- 金額の欄だけは、元の領収書と1枚ずつ見比べる
- 見比べ終わった領収書の写真と元の紙を、月ごとに分けてしまう
5番で金額だけを見比べるのは、ほかの欄より間違えたときの影響が大きいからです。支払先の店名が少し違っていても精算には困りませんが、金額の桁がずれると支払う額が変わります。確かめる所を絞ると、全部を見直すより短い時間で済みます。
読み取りが怪しくなる領収書
- 感熱紙の文字が薄くなったもの:撮る前に、届いたらすぐ撮ってもらうよう社員の方にお願いする
- 手書きの領収書:数字の「1」と「7」、「0」と「6」の読み違いが起きやすい
- 1枚に複数の品目と、値引きが並ぶもの:合計の欄を取り違えることがある
こうした領収書は、AIに「読み取りに自信が無い欄があれば、その欄に印を付けて」と頼んでおくと、人が見る所が分かります。AIの印は手がかりにすぎないので、印の無い行にも、金額の見比べは続けます。
社員の方にお願いすることは2つだけ
経理の手元で試して手応えがあったら、社員の方にも少しだけ協力をお願いします。お願いは、増やしすぎると守られなくなるので、2つに絞ります。1つは、領収書をもらったらその日のうちに撮ること。もう1つは、会食や手土産のように使いみちが領収書から分からないものに、相手先と目的を一言書き添えることです。
この2つが守られるだけで、月初にまとめて届く領収書の薄れた文字に悩むことが減り、本人に聞きに行く回数も減ります。撮った写真を送る先は、精算の担当ごとに決めた社内のチャットや共有のフォルダなど、いま使っているものでかまいません。
保存の決まりは、顧問の税理士に確かめる
領収書を写真で残すときの保存のしかたには、法律の決まりがあります。紙を捨ててよいか、写真をどう保存するかは、この記事では扱いません。新しいやり方を始める前に、顧問の税理士の方に確かめてください。決まりが分かるまでは、元の紙も残しておくと安心です。
規程に合わないものだけを人が見る
経費の決まり(規程)を、AIに読める形で用意しておくと、照らし合わせの下ごしらえを任せられます。規程の文章を、そのまま全部渡すより、確かめる項目を箇条書きにして渡すほうが、AIの印の付け方が安定します。
例:AIに渡す、確かめる項目の書き方| 確かめる項目 | AIへの書き方の例 |
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| 事前の申請が要るもの | 宿泊と、1回あたり一定の金額を超える会食は、申請番号の欄が空なら印を付ける |
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| 交通費の区間 | 同じ区間の交通費が月に何度もあるときは、区間を並べて書き出す |
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| 使いみちのあいまいなもの | 品目が「品代」「お品物」だけのものは、使いみちを聞く印を付ける |
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| 日付 | 精算する月より前の月の日付は、印を付ける |
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上限の金額などは、会社の規程にある数字をそのまま書き入れます。AIは印を付けるだけで、認めるかどうかは決めません。印の付いた行だけを経理の担当の方が見て、必要なら本人に聞きます。
本人に聞くときの文面の下書きも、AIに任せられます。「申請番号が見当たりませんでした。いつ申請したか教えてください」のように、何が足りないのかが分かる形にすると、やり取りが1往復で済みやすくなります。
例:1か月分の領収書
ここからは、架空の会社の1か月分の例です。件数は説明のための例です。
例:営業の方5人から、領収書が80枚ほど届いた月
経理の担当の方が80枚を撮ってAIに渡すと、80行の一覧ができます。AIが「読み取りに自信が無い」と印を付けたのは、感熱紙の薄い6枚と手書きの3枚。規程の確かめで印が付いたのは、申請番号の無い会食が2件、品目が「品代」だけのものが4件、前の月の日付のものが1件でした。
担当の方は、80行すべての金額を元の領収書と見比べ、そのうえで印の付いた16件を詳しく見ます。前の月の日付の1件は、本人が精算を出し忘れていたもので、そのまま認めることにしました。品目が「品代」だけの4件は、本人に使いみちを聞く文面をAIに下書きさせ、担当の方が言い方を直して送りました。
翌月は、社員の方に「届いた日に撮る」をお願いしたところ、読み取りの印が付く感熱紙の領収書が減りました。申請番号の無い会食は、事前に申請する決まりを営業の方にもう一度伝えたことで、印の付く数が少なくなっていきます。
この例で、人の仕事が無くなったわけではありません。80枚を打ち込む作業が、80行を見比べる作業に変わり、判断のいる16件に時間を回せるようになった、という変化です。何か月か続けると、印が付きやすい使い方が見えてきて、社内の決まりの書き方を見直すきっかけにもなります。
いばらきAIにご相談いただいたら
初回のご相談(無料・30分〜)はオンラインで行います。いまの精算の流れと、社内の決まりをうかがい、AIに任せる所と人が残る所を一緒に分けます。お名前などを伏せた領収書の写真が数枚あれば、その場で読み取りを試してお見せします。
社員の方が自分で領収書を撮って送ると、経理の手元で一覧と印ができている、という形の道具が必要なときは、業務ツールの開発としてお受けします。話をうかがったエンジニアがそのまま作り、試作を見ていただきながら仕上げます。作ったあとの不具合の対応や小さな直しは、保守としてお引き受けします。
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まとめ:来月の領収書を、届いた日に撮ってみる
- 経費精算の手間を「打ち込む・分ける・照らす・聞く」に分けて考える
- 打ち込みはAIに書き出させ、金額は人が元の領収書と見比べる
- 規程は確かめる項目の箇条書きにしてAIに渡し、印の付いた行だけを人が判断する
- 保存のしかたは、顧問の税理士の方に確かめてから変える
まずは来月、届いた領収書を10枚だけ撮ってAIに読ませ、いまの精算表と見比べてみてください。どの欄が合い、どの欄が怪しいかが分かれば、任せる範囲を決められます。