
総務の机には、毎日いくつかの申請書が届きます。休暇、備品の購入、出張、住所の変更。総務の担当の方は1枚ずつ目を通し、日付が抜けている、理由の欄が空いている、上長の印が無い、と気づくたびに本人へ戻します。本人は書き直して、また出します。
差し戻しは、出した人にとっても、受け取る総務にとっても、手間が2倍になる作業です。しかも、抜けやすい所は毎回だいたい同じです。
この記事では、申請書が差し戻される理由を整理したうえで、項目と書き方の見本をそろえる方法と、出す前にAIで記入の抜けを見つける手順を、休暇と備品の申請を例に説明します。
申請書が差し戻される理由
1か月のあいだに差し戻した申請書を、理由ごとに数えてみると、何が手間を生んでいるかが分かります。総務の担当の方が、差し戻すたびに理由を1行書き留めておくだけで十分です。
差し戻しの理由と、防ぎ方| 理由 | よくある例 | 防ぎ方 |
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| 記入の抜け | 日付・理由の欄が空いている | 出す前にAIで抜けを確かめる |
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| 書き方の違い | 「午前休」と書くべき所に「半休」とある | 書き方の見本を添える |
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| 添付の忘れ | 備品の申請に、見積もりや商品の説明が付いていない | 申請書ごとに要る添付を一覧にする |
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| 決まりとの食い違い | 申請の期限を過ぎている、上限を超えている | 決まりの要点を申請書の裏に書く |
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| 上長の確認の抜け | 上長の印やサインが無い | 出す順番(上長→総務)を書いておく |
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どの会社でも、上の2つ、「記入の抜け」と「書き方の違い」が多くを占めがちです。この2つは、出す人が出す前に気づけば防げます。総務に届いてから見つけるのでは遅い、というのがこの記事の考え方です。残りの3つは、見本と決まりの書き方を整えることで減らします。
中小企業基盤整備機構の調査で、AIをすでに導入している中小企業に部門ごとの導入を聞くと、総務・管理部門は68.3%と最も高く、製造・生産部門の34.9%のおよそ2倍でした。社内の手続きを扱う総務まわりは、AIを使った見直しが進んでいる部門だと言えます。
項目と書き方の見本をそろえる
AIで抜けを確かめる前に、申請書そのものを見直します。申請書の種類ごとに、次の3つを1枚にまとめた「書き方の見本」を作ります。
- 項目と、それぞれ「必須」か「書ける場合だけ」か
- 書き方の見本(実際に書いた例を1つ)
- 要る添付と、決まりの要点(期限・上限など、規程から抜き出したもの)
「書き方の見本」は、総務の担当の方が「こう書いてくれれば一度で通る」という書き方で作ります。規程の文章をそのまま載せるより、実際の記入例を1つ見せるほうが、出す人に伝わります。
見本づくりにも、AIが使えます。いまの申請書と、関係する規程の部分をAIに渡し、「この申請書の項目ごとに、必須かどうかと、書き方の例を作って」と頼むと、下書きができます。総務の担当の方が、差し戻しの多い所を書き足して仕上げます。
見本の置き場所を1つに決める
見本を作っても、どこにあるか分からなければ使われません。申請書のひな形と見本を、同じ場所に並べて置きます。共有のフォルダなら、申請書の種類ごとに「ひな形」「見本」「AIへの頼み方」の3つを1つのフォルダに入れます。紙の申請書なら、見本を申請書の束の上に1枚重ねておくだけでも違います。
項目を減らせないかも見る
見本を作っていると、「この欄は、もう誰も見ていない」という項目が見つかることがあります。昔の手続きの名残で残っている欄です。使っていない項目を減らすだけで、書く手間も、抜けも減ります。減らしてよいかは、その申請書を最後に受け取る人に確かめます。
AIで記入の抜けを見つける手順
見本ができたら、出す人が出す前にAIで確かめる手順を決めます。総務の担当の方がAIで確かめる形もありますが、出す人が自分で確かめるほうが、差し戻しの往復そのものが無くなります。
- 申請書を書き終えたら、書いた申請書(Excelなら中身、紙なら写真)と、その申請書の書き方の見本をAIに渡す
- 「見本と比べて、空いている必須の項目、書き方が見本と違う所、足りない添付を挙げて。見本に無いことは判断しないで」と頼む
- 挙がった所を直す
- 直した申請書を上長に出し、上長は中身(休んでよいか、買ってよいか)を判断する
- 総務は、届いた申請書を受け付け、決まりと合っているかを最後に見る
2番で「見本に無いことは判断しないで」と頼むのが大事です。AIは、頼まれていなくても「この理由では認められない可能性があります」のように、決まりの解釈まで書き出すことがあります。認めるかどうかは上長と総務が決めることなので、AIには形の確かめだけを任せます。
頼み方の文は、申請書の種類ごとに見本の1枚目に貼っておきます。出す人は、それをそのままAIに貼るだけで済みます。社内でAIのサービスをまだ使っていない場合は、総務の担当の方が受け付けたときに同じ手順で確かめ、抜けがあればまとめて戻す、という形から始めてもかまいません。
AIに入れる情報に気をつける
住所の変更や、家族の事情による休暇の申請には、個人の情報が含まれます。使うAIのサービスが、入力した内容を学習に使わない設定になっているかを確かめ、どの申請書ならAIに入れてよいかを、社内で決めておきます。気になる申請書は、AIを使わず、見本と見比べるだけにする選択もあります。
例:休暇と備品の申請
架空の会社の例で、2種類の申請書を見てみます。
例:休暇の申請書を出す前に、AIで確かめた
社員の方が、来月の休暇の申請書を書きました。AIに見本と一緒に渡すと、「取得の区分の欄に『半休』とあるが、見本では『午前休』『午後休』のどちらかで書く」「申請の日付の欄が空いている」の2つが挙がりました。社員の方は2か所を直して上長に出し、そのまま総務で受け付けられました。
例:備品の申請書を出す前に、AIで確かめた
別の社員の方が、作業用の椅子の購入を申請しました。AIは「見本では、商品の説明か見積もりの添付が要るが、添付が見当たらない」「使う人の欄が空いている(見本では書ける場合だけの項目)」と挙げました。社員の方は商品の説明を添付し、使う人の欄は、共用の椅子なので空けたまま出しました。
どちらの例でも、総務の担当の方は、届いた申請書を受け付けて決まりと合っているかを見るだけで済みました。休暇の日数が残っているか、椅子を買ってよいかといった中身の判断は、それぞれ上長が済ませています。総務の机で止まっていた往復が、出す人の手元で片づいた形です。出す人にとっても、戻されて書き直す気まずさが減ります。
2つ目の例で、AIは「書ける場合だけ」の項目が空いていることも挙げています。空けたままでよいかは、出す人が判断します。AIの指摘をすべて直す必要はなく、見本と照らして必要なものだけを直します。
1か月続けたら、総務の担当の方は、差し戻しの理由の書き留めを最初の月と見比べます。減らなかった理由があれば、見本の書き方を直すか、申請書の項目を見直します。こうして見本が少しずつ育っていくと、新しく入った方も、最初から一度で通る申請書を書けるようになります。
いばらきAIにご相談いただいたら
初回のご相談(無料・30分〜)はオンラインで行います。社内にどんな申請書があり、どこで差し戻しが多いかをうかがい、書き方の見本の作り方を一緒に考えます。申請書のひな形と関係する規程をお借りできれば、その場でAIに見本の下書きを作らせてお見せします。
申請を入力の画面から出すと、抜けがその場で分かり、上長と総務に順に回る、という道具が必要なときは、業務ツールの開発としてお受けします。お話をうかがったエンジニアがそのまま作り、総務の方や社員の方に試作を触っていただきながら直します。作ったあとの小さな直しや問い合わせは、保守としてお引き受けします。
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まとめ:差し戻しの理由を1か月書き留める
- 差し戻しの理由を書き留め、多い理由から手を打つ
- 申請書ごとに、項目・書き方の見本・要る添付を1枚にまとめる
- 出す人が出す前に、見本と一緒にAIへ渡して抜けを確かめる
- AIに任せるのは形の確かめだけ。認めるかどうかは上長と総務が決める
まずは来月1か月、差し戻した申請書の理由を1行ずつ書き留めてみてください。どの申請書のどの欄から見本を作ればよいかが見えてきます。