
「取引先の会社がAIを使い始めたらしい。うちも何かしたほうがいいのか」。水戸市内の会社の方から、こうした声を聞くことが増えました。ただ、何から手をつければよいか、だれに聞けばよいかが分からないまま、話が止まってしまうことも多いようです。
水戸は県庁があり、県の産業の窓口が集まる町です。市役所もAIを使った取り組みを進めています。近くに相談できる所があるのに、使わないのはもったいないことです。
この記事では、水戸で始まっているAIの取り組み、水戸で相談できる公的な窓口、そして窓口に行く前に社内で決めておく3つのことを、順に説明します。
水戸でも始まっているAIの活用
AIの話は東京の大きな会社のことだと思われがちです。けれども、水戸の町の中でも、AIを仕事に使う取り組みは少しずつ積み重なっています。
市役所の伝票の確かめ(2018年)
水戸市は2018年10月16日、NECと組んで、支払伝票の入力項目をAIで判定する実証を始めました。財務会計のシステムにたまったデータを使い、伝票の確かめを全件で行う、という試みです。
少し前の例ですが、会社の経理にも通じる話です。伝票の確かめは、人が1枚ずつ見ると時間がかかり、抜き取りで済ませがちです。AIに一度目を通させ、気になるものだけを人が見る形にすると、全部を見ることに近づけます。
祭りの観光案内(2026年)
2026年には、水戸市とブリッジウェルが、令和8年7月21日に「スポットAI「ToyTalk」を活用した自治体業務のDX推進に関する連携協定」を結びました。発表によると、この仕組みは「水戸の梅まつり」「水戸のあじさいまつり」「第66回水戸黄門まつり」で使われています。
どちらも市役所の取り組みで、会社の例ではありません。ただ、「人が全部を見るのは大変な仕事に、AIを手伝わせる」という考え方は、会社の事務や店の案内にもそのまま使えます。
市役所の例から借りたい考え方
- AIに全部を任せず、人が見る量を減らすために使う。伝票の例では、AIの判定を人の確かめの手前に置いています。
- 人が足りなくなる場面に当てる。祭りの時期のように、問い合わせが一度に増える所はAIの手伝いが効きやすい所です。
- まず1つの仕事で試し、使える形になってから広げる。会社でも、最初は1つの仕事に絞るほうが、合っているかを確かめやすくなります。
水戸市役所の取り組みと、会社の仕事に置きかえた例| 市役所の取り組み | AIがしたこと | 会社の仕事に置きかえると |
|---|
| 支払伝票の確かめ(2018年〜) | 入力の項目を判定し、全件を確かめる | 経費の伝票や請求書の確かめ |
|---|
| 祭りの観光案内(2026年) | 訪れた人の問いに答える | 店や施設の案内、よく来る問い合わせへの返事 |
|---|
水戸で相談できる公的な窓口
AIや仕事のデジタル化について、まず公的な窓口で話を聞いてみたい、という方も多いと思います。水戸の会社が使いやすい窓口を3つ挙げます。
水戸の会社が使いやすい公的な窓口| 窓口 | どんな所か | 向いている相談 |
|---|
| 茨城県よろず支援拠点 | 公益財団法人いばらき中小企業グローバル推進機構が運営。水戸市桜川の茨城県産業会館9階 | 売上や経営の悩みを広く聞いてほしいとき |
|---|
| 茨城県DX推進ラボ | 県と県内の産業支援機関などで作る集まり。窓口は県の産業戦略部 技術革新課 | デジタル化やAIの県の取り組みを知りたいとき |
|---|
| 茨城県産業技術イノベーションセンター | 県の機関。令和元年度から県内の中小企業のデジタル技術の活用を支援している | ものづくりの技術や、県のワークショップに出たいとき |
|---|
よろず支援拠点は、経営の相談の入口です。AIに限らず、売上や人手の悩みを広く聞いてもらえます。DX推進ラボや産業技術イノベーションセンターは、県のデジタル化の事業やセミナーの情報を知るのに向いています。
公的な窓口は、考え方の整理や、県の事業を知るのに役立ちます。一方で、自社の書類に合わせて道具を作るところまでは、窓口だけでは進みにくいこともあります。窓口で整理した話を、作る人に持っていく、という使い分けがおすすめです。
窓口の使い方の順番
- 困っていることを、売上・人手・事務の手間のどれに近いかで分けておく
- 経営全体の悩みなら、よろず支援拠点で話を聞いてもらう
- 県のデジタル化の事業やセミナーを知りたいなら、DX推進ラボや産業技術イノベーションセンターの案内を見る
- 自社の書類に合わせて試したい段階になったら、作れる相手に書類を見せて相談する
どの窓口でも、聞かれるのは「何に困っているか」と「今どうしているか」です。今のやり方が分かる書類を1枚持っていくだけで、話の進み方が変わります。
茨城県のDX支援の窓口を、くわしく見る
相談の前に、社内で先に決める3つのこと
帝国データバンクが2026年3月に県内の会社に聞いた調査では、生成AIの懸念や課題として最も多かったのが「生成 AI を活用すべき業務の範囲」(42.2%)でした。どの仕事に使えばよいかで迷う会社が多い、ということです。
窓口に行く前、専門の会社に相談する前に、次の3つを社内で決めておくと、話がぐっと早くなります。完ぺきに決める必要はなく、仮の答えで構いません。
- どの仕事で使うか:毎日か毎週くり返していて、時間を取られている仕事を1つ選びます。「AIで何かしたい」より「この案内文を書くのに毎回1時間かかる」のほうが、相談の相手も答えやすくなります。
- だれが使うか:社長が試すのか、事務の担当が毎日使うのかを決めます。使う人が決まっていないと、試したあとに続きません。
- 何を入れないか:お客さまの名前や電話番号、取引先との金額など、AIに入れない情報を先に挙げておきます。入れてよいものは、あとで相談しながら広げられます。
3つのことの、仮の答えの書き方(例)| 決めること | ぼんやりした答え | 相談しやすい答え |
|---|
| どの仕事で使うか | 事務を楽にしたい | 店の案内文を、貼り紙・ホームページ・チャットの3つに書き分ける仕事 |
|---|
| だれが使うか | みんなで使いたい | まずは事務の担当1人が、週に2回使う |
|---|
| 何を入れないか | 情報漏れが心配 | お客さまの名前・電話番号・取引先との金額は入れない |
|---|
右の列のように書けると、相談の相手は「その仕事なら、まずこう試しましょう」と具体的に返せます。左の列のままだと、一般的な説明を聞いて終わりがちです。
1枚の紙にまとめる
3つの答えを紙1枚に書き、いつも使っている書類(案内文、問い合わせのメモ、集計表など)を1つ添えておきます。窓口でも、専門の会社でも、この1枚があると相談の中身が具体的になります。
例:店の案内文と、社内の問い合わせから始める
ここからは、水戸市内で店を2つ持つ、従業員30人ほどの会社を例に考えます(例として作った会社です)。
例1:季節の案内文
梅の季節や夏の祭りの時期になると、店の入口の貼り紙、ホームページのお知らせ、チャットでの案内を、それぞれ書き直しています。担当の方が毎回いちから書くので、1つの案内に半日かかることもあります。
この場合は、伝えたいこと(日付、時間、変わる点)を箇条書きにしてAIに渡し、貼り紙用の短い文、ホームページ用の文、チャット用の一言の3つを下書きさせます。日付や時間が合っているかは、担当の方が元のメモと見比べて確かめます。
- 伝えたいことを箇条書きにする(例:7月の祭りの2日間、閉店を1時間早める、駐車場は使える)
- AIに「貼り紙用は3行、ホームページ用は200字ほど、チャット用は1文で」と長さを決めて頼む
- 下書きの日付・時間・曜日を、元の箇条書きと1つずつ見比べる
- 店でいつも使う言い回し(「ご来店」「お立ち寄り」など)に直す
- 直した文を次の季節の見本として取っておき、次からはそれも一緒にAIに渡す
最後の手順がいちばん効きます。見本がたまるほど、下書きが店らしい文に近づき、直す所が減っていきます。
例2:社内の問い合わせ
「有給の申請はどこに出すのか」「制服の替えはどう頼むのか」。同じ質問が、社長や総務の担当に何度も届きます。答えは社内の決まりに書いてあっても、どこに書いてあるかを探す手間がかかります。
この場合は、社内の決まりの文書をAIに読ませ、質問に「どの決まりの何行目にあるか」を添えて答えさせます。出どころが分かれば、答えが合っているかを人がすぐ確かめられます。
- この1か月に届いた社内の質問を、思い出せるだけ書き出す
- それぞれの答えが、就業規則や社内の案内のどこに書いてあるかを確かめる
- どこにも書いていない質問は、答えを決めて文書に書き足す
- 文書をAIに読ませ、書き出した質問を実際に聞いてみる
- 答えと出どころが合っていた質問から、社員の方に使ってもらう
3つ目の手順で、決まりの穴が見つかることがよくあります。AIを入れる前の準備ですが、それだけで同じ質問に答える回数が減ることもあります。
例の2つの仕事で、AIに任せる所と人が残る所| 仕事 | AIに任せる所 | 人が残る所 |
|---|
| 季節の案内文 | 3つの長さの下書きを作る | 日付・時間の確かめ、店の言葉づかいに直す |
|---|
| 社内の問い合わせ | 決まりの文書から答えと出どころを示す | 決まりに無いこと、例外の判断 |
|---|
どちらも、まずはふだんのAIの画面で試せます。毎日使うようになって手間が残るなら、その会社用の小さな道具にする、という順番で考えます。
いばらきAIにご相談いただいたら
いばらきAIの無料相談は、オンラインで30分〜です。メールで、会社名と、困っている仕事を一言お送りください。上で書いた「3つの答え」の紙が手元にあれば、そのままお送りいただいて構いません。
ご相談では、案内文や問い合わせのメモなど、いつもの書類を見ながら、AIで何ができるかをその場でお見せします。
続けて取り組む場合は、AX推進顧問(月2回の定例・最低3か月)をご提案します。初回の定例で、AIを使える仕事の一覧と、取り組む順番をお渡しします。データがあれば、その場で試作もお見せします。
上の例でいえば、案内文の見本の集め方と、社内の決まりの文書の整え方を定例で一緒に決め、うまく回った仕事から次の仕事へ広げていきます。公的な窓口で整理した内容があれば、それも出発点に使います。
AX推進顧問について見る
茨城県のAI導入について見る
まとめ:3つの答えを紙1枚に書く
- 水戸市役所でも、伝票の確かめや祭りの案内にAIが使われてきた
- よろず支援拠点・DX推進ラボ・産業技術イノベーションセンターは、考えの整理と情報集めに使える
- どの仕事で、だれが使い、何を入れないかを、相談の前に決めておく
まずは、時間を取られている仕事を1つ選び、3つの答えを紙1枚に書いてみてください。それだけで、どの窓口に相談しても話が具体的になります。