
求人を出しても応募が来ない。やっと入った人が1年で辞めて、その穴をベテランが残業で埋めている。茨城の会社の社長から、こうした話を聞くことが増えました。
人を採る努力は続けるとしても、それだけでは追いつかない、と感じている方も多いはずです。この記事では、県の資料にある人手の数字を確かめたうえで、人を増やす以外の3つの手と、そのうちAIに渡しやすい仕事の見分け方を紹介します。最後に、月末の集計を例に、どこから手を付けるかを具体的に書きます。
数字で見る茨城の人手不足
茨城県議会の特別委員会に県の産業戦略部が出した資料には、帝国データバンクの調査をもとにした人手の数字が載っています。正社員が「不足」と感じている県内企業の割合は、年ごとに次のとおりです(各年1月時点)。
正社員が「不足」と感じている茨城県内企業の割合(各年1月時点)| 年 | 割合 |
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| 2020年(令和2年) | 55.8% |
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| 2021年(令和3年) | 44.7% |
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| 2022年(令和4年) | 52.8% |
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| 2023年(令和5年) | 54.7% |
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| 2024年(令和6年) | 52.6% |
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| 2025年(令和7年) | 56.1% |
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2021年にいったん下がったあと、また上がり続け、2025年は56.1%になりました。資料では「コロナ禍以降で最も高くなっている」と書かれています。県内の会社の半分以上が、正社員が足りないと感じていることになります。
この先、働く世代はさらに減る
同じ資料には、この先の人口の推計もあります。県の人口は2020年の287万人から、2050年には225万人(▲21.7%)まで減る見込みです。15〜64歳の働く世代は、1,682千人から1,139千人(▲32.3%)へと、人口全体より大きく減ると推計されています。
若い世代の動きも厳しく、2024年には15〜29歳で7,800人の転出超過でした。人を採る競争は、今後も楽にはならないと考えておくのが現実的です。
自社の数字に置きかえてみる
県の数字は全体の傾向です。自社の備えを考えるときは、社内の数字に置きかえます。社員の名簿を見ながら、5年以内に定年を迎える人、ここ3年で辞めた人の数、いま欠員のままの持ち場を書き出してみてください。5年以内に抜ける人が受け持っている仕事が、備えを急ぐ順番の目安になります。名前を並べるだけで、どの持ち場が先に手薄になるかが見えてきます。
人を増やす以外の3つの手:減らす・渡す・残す
人手が足りないとき、手の打ち方は大きく3つあります。どれか1つではなく、仕事ごとに使い分けます。
減らす:やめても困らない仕事をやめる
誰も読んでいない報告書、二重に取っている控え、念のために続けている確認。長く続いている会社ほど、理由が分からないまま残っている仕事があります。AIの前に、まずやめられるものを探します。
探すときは、仕事ごとに次の4つを問いかけます。1つでも「いいえ」なら、やめるか、回数を減らす候補です。
- この書類や報告を、毎回読んで使っている人はいるか
- 同じ内容を、別の場所にも書いていないか
- やめたら、誰がいつ困るかを具体的に言えるか
- 月に1回で足りるものを、毎週やっていないか
やめる判断は、担当の人だけでは決めにくいものです。「社長が前に頼んだ」「前の担当から引き継いだ」という理由で続いている仕事は、決める立場の人が一言「やめてよい」と言うだけで消えます。AIを入れるより、手早く確実に時間が空く手です。
渡す:人や道具に任せる
ベテランや社長が抱えている仕事のうち、ほかの社員でもできるものは人に渡します。毎回同じ手順でくり返す作業は、AIや道具に渡します。人に渡すか道具に渡すかは、次の節の見分け方で決めます。
人に渡すときに気をつけたいのは、渡した先も人手が足りていないことです。若手に事務を渡した結果、その若手の本来の仕事が回らなくなっては意味がありません。人に渡す前に、渡す仕事のうちAIで短くできる部分を先に短くしておくと、受け取る側の負担が軽くなります。
残す:辞める前に手順を残す
人が辞めたときにいちばん困るのは、その人しか知らない段取りが消えることです。手順を書き残しておけば、次の人が早く覚えられ、AIに渡せる部分も見えてきます。話してもらった内容をAIで手順書の形に整える方法もあります。
手順を残す順番は、「辞める時期が近い人の仕事」「年に数回しかない仕事」「担当が一人しかいない仕事」の順がおすすめです。毎日やる仕事は周りの人も見ているので、何となく引き継がれます。回数の少ない仕事ほど、本人がいなくなると誰も分からなくなります。
一人しか知らない仕事を手順書にする方法を読む
AIに渡しやすい仕事の見分け方
AIは、どんな仕事でも代わりにできるわけではありません。中小企業基盤整備機構の全国調査(令和8年3月)でも、効率化が難しい業務として「人の判断が必要な業務(営業提案、顧客折衝など)」を挙げた会社が7割近くありました。渡しやすい仕事には、次のような共通点があります。
AIに渡しやすい仕事と、人に残す仕事の見分け方| 見るところ | AIに渡しやすい | 人に残す |
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| 形 | 毎回同じ形の表や文書を作る | 毎回、相手や状況で中身が大きく変わる |
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| 元の材料 | 注文書・日報・伝票など、元の書類がある | 相手の表情や現場の様子を見て決める |
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| 確かめ方 | 元の書類と見比べれば、合っているか分かる | 正しいかどうかを、経験で判断するしかない |
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| 間違えたとき | 人が確かめる段階で直せる | すぐ相手に伝わり、取り返しにくい |
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| 回数 | 毎日・毎週くり返す | 年に数回しかない |
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5つの行の左側に多く当てはまる仕事から、AIに渡す候補にします。右側に当てはまる仕事は、人が受け持ったまま、AIには下ごしらえ(資料を集める、下書きを作る)だけを頼む形が向いています。
たとえば営業の見積もりの相談は、相手の事情を聞いて値を決めるので人の仕事です。それでも、過去の見積書から似た案件を探して並べる、決まった値を書式に流し込む、といった前後の作業はAIに頼めます。1つの仕事を丸ごと渡すか残すかではなく、仕事の中の作業ごとに分けて考えると、渡せる部分が見つかりやすくなります。
AIは間違えることがあります。渡した仕事にも、人が結果を確かめる段階を1つ残します。たとえば、集計表の合計を元の伝票の合計と比べる、送る前の文書に担当者が目を通す、といった形です。確かめる時間を入れても、一から手で作るより短くなる仕事を選ぶのがこつです。
県内の調査(帝国データバンク水戸支店、2026年3月)では、生成AIを使っている企業のうち78.1%が効果が「あった」と答え、中小企業では85.3%でした。人の少ない会社ほど、1つの作業が減ったときの手応えが大きいとも読めます。
例:月末の集計を表1枚にした場合
ここからは、架空の会社を例に、どう進めるかを書きます。会社の規模・人数・時間は、説明のための例です。
例:社員60人の部品加工の会社
経理の担当は2人。そのうち1人が来年の春に退職する予定です。月末には、3つの部署から届く作業時間と材料の使用量をExcelで集め、品目ごとの原価の表を作っています。表の形は部署ごとにばらばらで、集めて整えるだけで丸2日かかり、手順を知っているのは辞める予定の1人だけです。
この会社では、次の順で進めることにしました。
- 辞める予定の担当に、月末の集計の段取りを口で説明してもらい、AIで手順書の形に整える(残す)
- 手順書を見ながら、使われていない集計の列がないかを確かめ、2つ削る(減らす)
- 3部署の表をAIに読ませ、品目ごとの原価の表を同じ形で作る道具にする(渡す)
- 残る担当が、AIの作った表の合計を、部署の表の合計と見比べる段階を入れる
- 2か月、手で作った表とAIで作った表を並べて確かめ、ずれがなくなってから切り替える
例の会社の月末の集計、進める前と後(数字は説明のための例) | 進める前 | 進めた後 |
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| 手順を知っている人 | 辞める予定の1人だけ | 手順書があり、残る担当も読める |
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| 部署から届く表 | 形が部署ごとにばらばら | 列の並びをそろえ、使わない列を2つ削った |
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| 品目ごとの原価の表 | 担当が手で集めて整える | AIが部署の表を読んで作る |
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| 人がすること | 集める・整える・計算する | AIの表の合計を、部署の表と見比べる |
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| かかる時間 | 丸2日 | 半日ほど(見込み) |
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この例では、集めて整える丸2日の作業が、AIの表を確かめる半日ほどになる見込みを立てました。大事なのは、時間が減ることより、辞める人の頭の中にしかなかった手順が、手順書と道具の両方に残ることです。残った担当1人でも、月末を回せる形になります。
実際には、部署の表の形をそろえてもらう段階で、現場から「この欄はいらない」「この書き方のほうが楽」という声が出ます。そうした声を取り入れながら直していくので、最初の1か月は、手で作る表も並行して残しておきます。
いばらきAIにご相談いただいたら
「一番時間を取る作業」の1行と、辞める予定の方がいればその方の受け持ちを、メールで一言お送りください。初回のご相談(無料・オンライン・30分〜)では、その作業が減らす・渡す・残すのどれに当たるかを、書類を見ながら一緒に仕分けます。
AX推進顧問(月2回の定例・最低3か月)では、退職の時期から逆算して、手順を残す仕事とAIに渡す仕事の順番を決めます。最初の定例で順番の一覧をお出しし、月末の集計表のようなデータがあれば、その場でAIにまとめさせた試作を見ていただきます。
道具として作り込む段階では、定例で話をうかがったエンジニア(代表)が、そのまま開発を受け持ちます。辞める方の段取りを聞いた本人が作るので、手順書と道具の中身がずれません。
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まとめ:一番時間を取る作業を1つ書く
- 県内で正社員が足りないと感じる企業は56.1%。働く世代は2050年までに3割ほど減る見込み
- 人を増やす以外に、減らす・渡す・残すの3つの手がある
- AIには、同じ形・元の書類あり・人が確かめられる仕事から渡す
明日、いちばん時間を取っている作業を1つ紙に書き、先週その作業に何時間かかったかを横に書いてみてください。その1行が、減らす・渡す・残すのどれから始めるかを決める材料になります。
書いた作業が「やめても誰も困らない」ものなら減らす、「毎回同じ形」なら渡す、「その人しか分からない」なら残す。3つのうちどれに当たるかを横に書き添えるだけで、来週からの動き方が決まります。